今の先軍時代に対する人民の評価は「人民を見捨て、軍隊しか知らない」という点数の低いものだが、金正日は「私にどのような変化も期待するな」と言い放って変わることを拒否し、依然として先軍政治を声高に主張している。
本来、人民を導くものは軍ではなく党のみである。党大会を開催し、社会の平穏を保障しなければ人民の暮らしも経済も再生できない。
つまり、先軍政治を朝鮮の人民が支持する状況では全くないのである。

人民の支持を失っている先軍政権を継承するというなら、その先には極めて大きな困難が待っていると考えるべきだ。
朝鮮では強力な独裁政党が存在しているのに、非正常的に軍部が勢力を得ていて人民は見捨てられている。
そんな不安定な体制を継承するというのは、あえて困難を継承するようなものだと言っても言い過ぎではない。
国内的には、先軍政治とは以上のような不安定極まりない体制である。

そして国際政治においても、朝鮮の先軍政治はどれだけ厄介な問題を抱えてしまったことか。
その筆頭は核兵器の問題である。
韓国はもちろんのこと、米国や中国、ロシア、欧州そして日本の関心は核問題に集中している。将来、朝鮮周辺地域の「核軍拡競争」を呼び起こすかもしれない。

核問題によって引き起こされるややこしい事態に対し、金正日の後継者は当然向き合っていかねばならないはずだ。困難だらけで展望のない未来が待ち受けている、そんな体制の後継者候補に一体誰がなりたがるだろうか。
(つづく)
注1 軍は傘下に外貨獲得のための貿易会社、漁業会社などの事業体を数多く持っている。先軍時代に入った九八年頃からこういった事業体が急増したが、内部記者の報告によると、〇八年には整理統合が始まった模様である。はっきりした理由は不明だが、増殖した軍の利権が、他の政治勢力の巻き返しによって浸食されている気配が窺える。この点に関しては改めて取材・報告したい。

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