長崎県にある米海軍佐世保基地のフェンスに掲げられた立ち入り禁止の標示。長崎県にある米海軍佐世保基地のフェンスに掲げられた立ち入り禁止の標示。

国家が情報を隠蔽するとき

21 軍事的性質により公表せず
この度の総選挙で自民党と公明党が敗れ、政権交代が起きた。民主党を中心に社民党と国民新党の連立政権が発足した。連立政権の政策合意には、「日米地位協定の改定を提起」することが盛り込まれた。政策合意の文書に、こう書かれている。

「主体的な外交戦略を構築し、緊密で対等な日米同盟関係をつくる。日米協力の推進によって未来志向の関係を築くことで、より強固な相互の信頼を醸成しつつ、沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で望む」

しかし、米軍優位の不平等な日米地位協定を改定するためには、まず地位協定にからむ日米間の密約や日米合同委員会での様々な合意事項や米兵犯罪の統計など、全てを明らかにする情報公開が必要である。
当然、米兵犯罪裁判権をめぐる密約も明らかにしたうえで、密約を無くし、米軍側に有利な合意事項と運用実態を改めなければならない。

『実務資料』に法務省と外務省が協議して黒塗り処理した部分を、閲覧禁止・黒塗り処理される前の『実務資料』原本と照らし合わせると、米軍の軍事的な都合を最優先させている実態が見えてくる。それを国民・市民の目から覆い隠そうとして秘密にしているのである。

たとえば『実務資料』の40ページ、在日米軍に基地や演習場などのため日本国が提供した「施設・区域」に関して、次のような解説が書かれている。なお、下線はいずれのケースも筆者が説明のために引いた。
「地位協定第2条第1項によって日本国が合衆国軍隊に使用することを認めた施設又は区域(当該施設又は区域の運営に必要な設備、備品及び定着物を含む)をいう。具体的に何処がこれに該当するかは、日米合同委員会において決定される。また、この施設又は区域のリスト等は、軍事的な考慮から適当でない場合を除き、日本国の官報及び合衆国軍隊の公刊物に公示されることになっている」

一方、法務省と外務省が協議して黒塗り処理した『実務資料』複製では、上記の下線部分が黒塗りされ消されている。しかし、それだと読者は、在日米軍の「施設・区域」の存在は全て公示、公表されることになっていると受け取ってしまう。
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