安保刑事特別法第11条と『合意事項』第9項(a)に関する質問と回答。安保刑事特別法第11条と『合意事項』第9項(a)に関する質問と回答。
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この質疑回答からは、米兵犯罪に現場で向き合う地検の検事らの疑問や戸惑いの念が伝わってくる。安保刑事特別法第11条と「合意事項」第9項(a) の食い違いについて、いったいどういうことなのだろうか、どちらの規定に従えばいいのかと、疑問に思うのは当然である。
しかも、法務省刑事局の『外国軍隊に対する刑事裁判権の解説及び資料』(「検察資料〔66〕」)では、安保刑事特別法第11条の規定による処理をすべきだと解説されているのだから。
ところが、この当然の疑問に対して上記の回答は正面から答えていない。安保刑事特別法第11条と「合意事項」第9項(a) の相反する点について、何ら論理的な説明もせず、ただ一方的に「合意事項」第9項(a) に従うべきだと、事実上、命じている。
つまり、国会で可決されて施行され、全文が公表されている安保刑事特別法ではなく、日米合同委員会の秘密文書である「合意事項」を優先させているのである。これは法治国家としてあってはならないことではないだろうか。
米軍人や軍属の犯した罪が公務執行中に行なわれたものだと、日本国当局(検察官又は司法警察員)が明らかに認めたときは、被疑者の身柄を米軍当局に引き渡さなければならないが、未だ明らかに認められないときは引き渡すべきではない、という安保刑事特別法第11条の規定に比べて、「合意事項」第9項(a) の「当該犯罪が公務の執行中に行われたものであるか否かが疑問であるとき」、すなわち公務執行中だったのかどうかはっきりせず、未だ明らかに認められないときでも、被疑者の身柄を引き渡す、という規定は米軍側に大幅に有利になっている。
その結果、本来、日本側で裁くべき米軍人や軍属の罪が見逃されてきたケースも少なくないのではなかろうか。
上記の回答は、まず米軍優先ありきという日米地位協定運用の実態をよく表している。
つづく(文中敬称略)
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