順川(スンチョン)ビナロン連合企業所潜入取材 2
取材・撮影 キム・ドンチョル
解説 石丸次郎
二〇〇九年七月取材

骨組みと外壁だけが残っている建物。建設途中で投げ出されたのか、稼働停止後に窓枠や内部設備が持ち出されたのかは不明。敷地がすっかりトウモロコシ畑に「転用」されているのがわかる。

 

「順川ビナロン連合企業所」とは
「順川ビナロン連合企業所」は故金日成主席の直々の命によって建設された、北朝鮮最大の石炭化学コンビナートである。
広さは一八平方キロメートル、甲子園球場四六七個分に及ぶ。計画が立ち上がったのは一九八三年四月。金日成はこの時「年産一〇万トン規模のビナロン工場を建造せよ」と指示し、建国四〇周年の八八年の完工を目指せと命令した。コンセプトは「自前の資源と技術で化学工業を打ち立てる」であった。

資金難のために建設中断と再開が繰り返され、八九年一〇月にようやく第一段階の工事が終わり、九一年に完成した、とされた。
しかし実際には、この国家の威信をかけて建設された巨大プラントが、ほとんど稼動することなく立ち枯れてしまったのは前述した通り。「現在動いているのはカーバイド工場だけ」というのが現地を訪れたキム記者の弁である(カーバイド=炭化カルシウム。石炭と石灰で作る。燃やしてアセチレンガスを発生させる)。

窓枠が取り外された建物の中には設備らしいものは全く残っていなさそうである。やはり手前の敷地は畑になっている。

 

ビナロン工場をはじめとして、当初計画された主な施設と生産量は以下のとおりである。カーバイド工場(一〇〇万トン規模)、塩化ビニール工場(二五万トン)、たんぱく質飼料工場(三〇万トン)、石灰窒素肥料工場(九〇万トン)、メタノール工場(七五万トン)、苛性ソーダ工場(二五万トン)、炭素ソーダ工場(四〇万トン)、無煙炭工場(二五〇万トン)など。さらに二〇万KW規模の石炭火力発電所(八八年六月操業開始とされている)も併せ持つ、なんとも欲張ったコンビナート計画であった。(参照 韓国・中央日報統一文化研究所など)
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