民間ウェブサイト「ウィキリークス」が入手した米国の外交公電が暴露されて大きな波紋を呼んでいる。北朝鮮についても、韓国や中国高官の見立てや、秘密に付されてきた情報も表ざたになり関心を集めている。

漏えいした情報が100%真実なのか、また各国外交官たちの発言が北朝鮮の内実をどれだけ反映したものなのか、検討が必要であるが、筆者はとても興味深く読んだ。注目したのは韓国と中国政府の高官が、北朝鮮国内が政治・経済的に相当混乱していると分析している点である。

日本の北朝鮮ウォッチャーの中には、北朝鮮の体制が金正日総書記の下で固くまとまっており、厳しい統制もあいまって、政権はきわめて安定していて強固だと認識している人が少なくない。内部情報が少なく、反体制派の活動や騒乱の類が伝わってこないためだろう。

確かに、金正恩氏も姿を見せた10月10日の軍事パレードの映像などを見ていると、国内の混乱ぶりなど微塵も感じられない。だが、北朝鮮の体制が実は脆弱で、混乱が年毎に深まっていることを、筆者は機会あるごとに指摘してきた。

図らずも「ウィキリークス」の暴露は、その一端をさらけ出したわけだ。ひとついくつか拾ってみよう(韓国と日本の各紙をまとめた)。
在韓米国大使館が今年一月に本国に報告した文書のひとつ。韓国の柳明桓(ユ・ミョンファン)外相(当時)が、今年一月、訪韓中だったロバート・キング対北朝鮮人権特使に対し「まだ公開されていないが、海外で勤務する複数の北朝鮮高官が最近韓国に亡命した」と語ったという。亡命の理由は不明だが、事実だとすると北朝鮮の支配層の中で離反が起きていることを示唆する内容だ。

付言すると、筆者は2007年初め頃、取材した韓国政府関係者から、「海外公館勤務の北朝鮮外交官から、『韓国に亡命したいので助けて欲しい』という要請が相次いでいて、韓国政府は困惑している」と聞かされたことがある。
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