筆者が「受け入れているのか?」と尋ねると、「大物ならともかく、普通の外交官の場合は基本的に断っている。北を刺激するからね。外交官の中には、自分を高く売ろうとして、亡命する代価として金までを要求する者が多くて嫌になる」と答えが返ってきた。

以前、このメルマガで、労働党幹部のインタビューをお届けしたが、金正日政権から心が離れているのは庶民だけでない。多くの幹部たちも、改革開放に踏み切らず、経済を悪化させる一方の政権に愛想を尽かしている。

韓国に亡命受け入れを求めた外交官たちの心情は推測するしかないのだが、権力から遠い地方の民衆たちだけでなく、中心に近いところでも政権の求心力は衰える一方のように思われる。

さて、次は北朝鮮内部で「人事による混乱」が発生していることに触れておきたい。
金正恩後継体制作りに突入した現在、大幅な人の入れ替えが始まっており、「内政の季節」に揺れている。そのため、今後さらに国内政治は不安定になっていくと思われる。

黄昏の老導者よりも、次代の方に人々の気が向かうのは当然のことで、人事に絡んで、自分が生き残るためには誰につくべきか、誰から離れるべきか、軍も党も警察も、組織の中はざわついている。

また、支配層の中では正恩への忠誠心競争が始まっており、正恩後継にいかに力を尽くしているかをアピールしなければならない。忠誠心が足りないと批判されると、左遷されたり方に飛ばされたりという、不遇をかこつぐらいならまだいい方で、下手をすると「反対派分子」のレッテルを貼られて粛清されかねないのだ。
「内政の季節」については次回で詳しく書きたいと思う。(石丸次郎)

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