筆者は、この「再調査合意」に立ち返ることが、拉致問題前進にとって、現時点での最善策だと思う。
そして、それは一刻も早く始めてもらうべきである。被害者家族の高齢化もあるが、北朝鮮内部が予断を許さない状況になってきたからだ。
拉致問題は北朝鮮では「金正日マター」である。金総書記本人が、小泉首相を平壌に招いて直談判して事態を動かした案件なのだ。

その当人が今、加齢と健康悪化で執務能力を大幅に低下させている。要するに、金総書記がまだ指揮官として働けるうちに、膠着している局面を動かすという合意を取り付けておかないと、先行きが全く不透明になってしまうの可能性があるのである。

金総書記が急死したり執務不能になったりした場合、北朝鮮政権は金正恩氏への体制移行に集中するため、日本人拉致問題は長期間放置されて動かなくなる可能性がある。

また、無理な世襲後継の強行によって、長く堆積してきた矛盾が噴出し、北朝鮮国内が大きく混乱するかもしれない。
ポスト金正日時代に北朝鮮がどうなるのか、予測は困難だ。だからこそ金総書記がまだ何とか健在な今、再調査を金総書記の担保のもとに、始めてしまうのことが重要なのだ。

制裁一部解除という譲歩は必要になるだろう。だが、外交にはしたたかさがなくては。「押してもだめなら引いてみよ」である。
(石丸次郎)

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