最終回 平壌の裏通りを行く 美林(ミリム)駅付近 高架下の露天商 大同江の閘門

カメラは高架道路の下から土手に向かっていく。この日は冬とは言え晴れているためか三々五々、人々が集って食事をしているのが見える。一方で吹きさらしの土手の上の商売人たちはたいへんな厚着である。特に注目したいのが露天理髪店だ。市場経済の波がサービス業にまで及んでいるのが分かる。
(撮影 リ・ソンヒ 平壌・美林洞区域 2008年12月 02分42秒)

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90年代後半の社会混乱の中で、平壌でも多くの餓死者が発生した。その後も今日まで経済の復旧は成らず、最も優待される平壌ですら食糧配給は遅配欠配が日常茶飯事である。政府の言うことを聞いて配給だけを待っていたのでは飢え死にしてしまう。そんな中で平壌市民たちも、めいめいが創意工夫して商売に立ちあがった。

美林洞の寒空の下で、質素な防寒着姿で地べたに座ったり立ったりしたまま商売をしている女性たちを「貧しく可哀そう」な人たちだと見ると、北朝鮮社会を見誤ることになる。彼女たちは統制が厳しい平壌にあって、経済的に自立して暮らしていくことができる唯一の方法である商売を、しんどいながらも喜んでやっているのだ。それは、働けば働いただけ実入りが増えるからであり、商売こそが豊かになれる唯一のチャンスだからだ。彼女たちの働く姿は、一定の「経済活動の自由」を勝ち取って懸命に生きている姿だと捉えるべきだろう。

これまでメディアを通じて我々が見せられてきたのは、特別な平壌、あるいは例外の平壌である。今回のリ・ソンヒの報告にある「一号道路」の外側の民衆の姿にこそ、平均的で平凡な平壌市民の暮らしが見えるはずだ。

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