痩せこけた10代とおぼしき兵士たち。軍隊の食糧不足はこの20 年間慢性化している。(2008年9月平壌市江東郡 チャン・ジョンギル撮影)


分析 
食糧難をどう考えるべきか 2

石丸次郎

2. 軍隊の食糧不足の深刻さ
何事にも軍隊最優先の「先軍政治」を掲げる北朝鮮で、軍人兵士に対する食糧配給がすこぶる悪くなっている。軍人の栄養状態が悪いのは九〇年代からずっと続いている現象で、「徴兵で入隊すると栄養失調になる」と、常識のように語られるようになって久しい。その影響で、部隊を脱走したり住民の家畜や食糧を盗む、一般人に集団でからんで金品を奪うという、強盗まがいの行為が多発してきた。規律と士気が著しく低下していることは想像に難くない。

◆ 蔓延する兵士の栄養失調
まず、平安北道に住むキム・ドンチョル記者が一一年一月末に電話で伝えて来た報告。
「年が明けてから急に悪くなったと思う。一月中旬に自宅近くにある護衛司令部(金正日総書記や要人警護専門部隊)の知り合いの将校に会ったので尋ねると、一日の食糧供給はトウモロコシ中心に三〇〇グラム、つまり一食一〇〇グラムだという。

これは座っていても栄養失調になる量だ。この将校は、食糧が届けられないことに文句を言いながら「一月でこんな調子だと、ポリコゲ(春窮期)はどれほどひどくなるんだろう」と不安を口にした。

別の日には若い兵士がわが家に来て「どれだけでもいいから食糧を下さい」と物乞いの真似のようなことをするので驚いた。「どうした?」と訊くと「上官からの命令で家々を回っている。食べ物を持って帰らないと殴られる」と言う。息子を入隊させた親が心配になって部隊を訪れ、栄養補給させたいと家に連れて帰るケースがとても増えている。例年春先から悪いが、この一〇年間、一月の時点でここまで軍隊に食糧がないという年はなかった。」

次は両江道の取材協力者のチェ・ギョンオク氏から二月末に届いた情報だ。
「両江道のある旅団の指揮部の将校に会った。兵士たちは一食にトウモロコシ米一六〇グラムに、おかずは「乾醤油」という固形醤油を水で溶いたものだと言っていた。待遇のいい指揮部ですらこの有様だ。この旅団の一般部隊では一食がトウモロコシ米一三〇~一四〇グラム、おかずは塩水を飲むだけだそうだ。

二月二二日に江原道通川(トンチョン)郡で服務しているという二二歳の兵士に会った。栄養失調になって実家に戻ってきていた。「死ぬ者もいます。ひと匙の塩をおかずとして兵士四人で分けている。両親が家に帰れるように動いてくれたから自分は良かったが、あのままいたら死んでいたかも知れない」と言っていた。」
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