次に肥料が無い。朝鮮では化学肥料が足りないうえに高価なので、人糞に灰を混ぜたものを肥料として使っている。だから人糞の奪い合いをするんです(笑)。農場員が農場の作物を盗むことも多い。食べたり市場で売ったり。少しずつ盗んでも結構な収入になる。これも(農場の)収穫が減る原因の一つだろう。」(一〇年一一月)

「食べるものがなくなったので「カリ」を食べている。「カリ」とはジャガイモから澱粉を取った滓を乾かしたもの。澱粉工場で売ってくれる。家畜の餌だろうって? そうです。豚の餌にはトウモロコシが混ざる。私たちはそれよりひどいもの食べなければならないときもあるんです。」(一〇年六月に中国で編集部がインタビューした、咸鏡北道延社(ヨンサ)郡の三〇代の農民女性)

次のやり取りはキム・ドンチョル記者が平安南道で農民を取材したビデオに記録されていた会話の一部である。
一〇年六月、平安南道のある農家。庭では、年老いた女性と孫と思われる少女が、売るためのもやしのひげを取っていた。

キム:この村では「分配」はありましたか?
女性:「分配」なんてないよ。食べものなんてちっともくれないよ。だからトウモロコシご飯なんかを少しだけ食べてる。

キム:トウモロコシご飯も食べられない人が多いと聞きました。
女性:食べられなくて死んでるよ。まともに食事ができずに。

キム:それでも幹部は食べているんでしょう?
女性:(農場の)幹部が何を食べるんだ。幹部もまともに食べていないよ。

キム:おばさんのところはすっかり食糧が切れたんですか?
女性:うん。にんにくも野菜も売れるものは全部売ったし。

キム:それでは人の畑の草取りなんかをして(食糧をもらう)?
女性:仕方ない。何か食べないとどうしようもないから。
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