◆すでに放射性ゴミの持ち出しも
「安全委は原発廃材がたとえばフライパンに再利用された場合にそれが口に入る場合の被曝量を、フライパンの使用時間や面積、金属の腐食速度などから計算して安全だと結論づけてます。しかしそれは、仮定に仮定を重ねたものに過ぎません」と、末田さんはクリアランス制度の安全性を疑問視する。

クリアランスレベルについては公衆限度である1ミリシーベルトの100分の1だから安全だ、といった説明がされる。だが、実は0.01ミリシーベルトという数値は、原発の放射性ゴミが再利用された結果、われわれが被曝する量の基準値であって、廃棄物を調べたときの測定値ではない。

実際の規制値は、原発解体で発生する放射性ゴミが埋め立て処分されたり、「リサイクル」された場合など、いくつかの仮定の状況を想定し、そこからの被曝が年間0.01ミリシーベルトに収まるよう逆算して、50種類以上の放射性核種ごとにそれぞれ定めている。「仮定に仮定を重ねたもの」との批判はそのためだ。

PR施設の横に展示されていた東海原発1号炉のタービンローター。説明では汚染はないという 2005年10月撮影:井部正之

 

「ヒバク反対キャンペーン」事務局の建部暹さんによれば、基準値の算出方法にも問題があるという。
「最悪の状況を想定してクリアランスレベルを設定しておらず、計算と現実にかなりの違いが出る可能性がある。いくつもの被曝経路が重なるなどして実際の被曝が0.01ミリシーベルトどころか、その10倍とか、場合によっては100倍になることもあり得る。広い見地から安全を考えて導き出したかどうか非常に疑わしい」
建部さんは続けていう。

「しかもクリアランスレベル以下かどうかの確認では何カ所か測定して平均することになっている。個別の測定値が基準より高くても平均して下回れば無視される。厳密になんてやらないでいいようになっているんです」
前出の末田さんも運用面ついて懸念している。

「以前、柏崎の刈羽原発で管理区域の中のものの持ち出しが問題になったことがあります。たとえば『金属くず』と伝票にかかれていたのを『くず』というところだけ消して外部に持ち出したりした。これは東電(東京電力)も認めています」
こうして放射性ゴミが外部に持ち出され、野焼きされたりしたという。野焼き現場のひとつでは放射性物質のコバルト60が検出されているが、東電は放射性ゴミだったことを否定している(『原子力資料情報室通信』358号)。

「計測はスーパーのレジでバーコードを読みとる程度の早さで厳格な検査は不可能」「同僚が記録改ざん作業で何日も帰宅できない」といった原発内作業の下請け労働者からの告発情報もある(同上)。厳しい管理をしているはずの現状ですらこれである。

下手をすると、おおっぴらに放射性ゴミを外部に持ち出す方便にされかねない、と末田さんは心配していた。 国は抜き打ち検査などをして安全確認をするとしているが、「どうせ形だけ」との声も少なくなく、どの程度の抑止力となるのかは未知数といえる。
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