◆視聴は非社会主義的行為...広がる韓国文化の取締り
(本誌特約=「デイリーNK」チェ・ソンミン記者)
北朝鮮当局が最近、韓国歌謡をはじめ、韓国歌謡のメロディーに北朝鮮式の歌詞を付けリメイクしたものなど500余曲を「禁止曲」として選定、保安署(警察署)に取締りを指示したと、13日、デイリーNKの内部消息筋が伝えた。国内に広がる「韓流」に、北朝鮮当局が危機感を持っていることを示す象徴的な措置と見られる。

この消息筋は「当局は住民達の間で流行する歌謡曲の出処を確認した後、韓国歌謡や韓国式の曲や歌、さらに北朝鮮映画の主題歌など500余曲を禁止曲と選定した。(これらの視聴や拡散を)人民保安部(警察)が『非社会主義的行為』と規定し取締まりに出た」と語る。
北朝鮮政府は以前にも、109常務(非社会主義行為の取締りのために特設された組織)などを通じ、韓国歌謡を取り締まってきたが、禁止曲を選定し、発表したのは初めて。同消息筋は「禁止曲の中には北朝鮮が制作した『春の日の雪解け』、『リム・コクチョン』、『春香伝』、『愛、愛、私の愛』のような映画の主題歌も含まれている」と付け加えた。

北朝鮮では2006年から既に、伝統史劇の視聴が禁止されている。前出の消息筋は「(伝統史劇は)封建社会を批判する内容の古典的な映画だが、封建時代の役人たちが民衆を抑圧する行為が、最近の世相に似ている。こうした映画のために、幹部に対する非難が大きくなる可能性があるというのが禁止の理由だ。『春香伝』の主人公、イ・モンリョンが"金樽美酒千人血(金の樽に入った美しい酒は、千人の血だ)"と詠む場面が代表的だ」と説明する。

同消息筋によると、北朝鮮政府が明らかにした韓国関連禁止曲は、『韓国歌謡曲』、『ノガバ』(韓国の曲に北朝鮮式の歌詞を乗せた替え歌)、『韓国風の創作曲』など、大きく三種類にで分類できるという。
例えば、北朝鮮で流行する代表的な韓国歌謡には、『朝の露(ヤン・ヒウン)』、『朋友(アン・ジェウク)』、『雑草(ナ・フナ)、『アパート(ユン・スイル)』などがある。北朝鮮の住民の中には、この歌が韓国の歌であると知らずに歌う人もいる。 『アパート』は北朝鮮で一番広く歌われている韓国の歌謡曲だ。

韓国の歌謡曲は、過去にはビデオテープやDVDなどで共有されていたが、最近ではMP3、MP4、USBなどを利用し、簡単に複製が可能になった。また、青少年の間では、韓国の歌を知らなければ仲間外れにあうほどだという。今回の指示によって、公の場での韓国歌謡の視聴は難しくなるだろうが、個人や小規模の集まりまでを取り締まることは、難しいものと思われる。
これについて先の消息筋は、「保安員(警察官)がいくら韓国映画や音楽を取り締まろうが、人々はあらゆる手を講じ、見られるものは見て、聞けるものは聞いている。どこまで取り締まることができるか疑問」と付け加えた。

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