◆数万人犠牲か ピークは4~6月

特集[2012黄海道飢饉]記事一覧
北朝鮮南西部の黄海道で、今年に入り大変なことが起こっている。この北朝鮮随一の穀倉地帯で、多くの餓死者が発生しているのだ。金正恩氏が最高指導者の地位に就いて以降、「美しく発展する首都平壌」の様子が、北朝鮮メディアや訪問した外国人によって伝えられているが、その平壌の「華やかさ」の影で「(かく)されし飢饉」が発生していたのである。その実態の一端を報告し、発生原因について考察する。国際社会がこの「匿かくされし飢饉」に注目し、速やかな調査と対策に取り組むことを望むばかりだ。
(取材 石丸次郎 リ・ジンス ク・グァンホ ナム・ジョンハク パク・ヨンミン)

(参考写真)黄海南北道の位置。中国との国境から最も遠い場所のひとつ。沙里院(サリウォン)市、海州(ヘジュ)市はそれぞれの道の道庁所在地。

(1) 金正恩氏デビューの影で起こった飢饉
今年に入って、我々アジアプレス北朝鮮取材班には、北朝鮮内部の取材パートナーたちから、黄海南北道地域での食糧難についての報告が、次々と寄せられてきた。
我々は3月以降、朝中国境地帯を度々訪れ、中国に出国してきた北朝鮮住民への聞き取り取材を行うとともに、北朝鮮内部の記者と協力者たちに、黄海道現地での詳しい実態調査を要請した。

また、この8-9月にも、約二週間にわたって朝中国境取材に赴き、合法・非合法に国境を超えて来た黄海道出身の6人に直接会った。これらの取材で明らかになったのは、今年に入り穀倉地帯である黄海道の農村を中心に、相当数の餓死者が発生しているということだった。
いったい黄海道で何が起きているのか。北朝鮮住民による証言を紹介する。なお、取材者と証言者の安全のため、北朝鮮内の取材場所や地域名を伏せてある部分があることをご理解いただきたい。証言者は全て仮名である。(リ・ジンス 石丸次郎)

 

(参考写真)「16歳です」。シム記者の問いにそう答えた女子中学生。身なりからコチェビではなさそうだが、ひどい痩せようだ。(2008年8月海川市 シムウィチョン撮影)

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