◆率直に失敗認め政策転換を
拉致問題が前にまったく進まない。拉致被害者の子供たちが帰国した04年以降、事態が一寸も動かなかった現実は、この8年間の対北朝鮮外交が失敗だったことを示している。「圧力をかけて事態を動かす」として06年には経済制裁が発動された。しかし進展はまったくなく、むしろ混迷は深まるばかりだ。経済制裁は見直されるべきではないか。

北朝鮮国内で撮影された横田めぐみさん

北朝鮮国内で撮影された横田めぐみさん

拉致問題が前進しない一義的な責任は、「拉致事件は解決済み」として協議に応じない北朝鮮側にあるのは言うまでもない。それは、事態を動かすためには強い圧力が必要だという強硬論が急速に台頭する原因になり、06年に経済制裁が発動され、日朝間の経済関係はほぼ完全に断絶することになった。
周知の通り、経済制裁発動によっても拉致問題は一寸も前に動くことはなく、むしろ膠着状態は深まってしまった。そして時間だけがいたずらに過ぎてしまった。

これは「経済制裁は拉致問題を動かす政策として有効でなかった」ということに他ならない。いや、経済制裁こそが事態を膠着させた原因のひとつになってしまったと、筆者は考えている。
政府も、政治家も、支援者も、そして拉致被害者家族も、事態を打開するために、経済制裁とは別の方策を立てる時期に来ている、これが筆者が本稿を書こうとした問題意識である。

そう考えた一番の理由は、拉致被害者家族の高齢化が進んでいることだ。横田めぐみさんの父、滋さんは被害者の父親としては最年少だが、今年の11月で80歳になる。神戸の有本恵子さんの両親は86歳と84歳だ。被害者家族にとっては、一刻の猶予もない状況になってきた。これ以上の停滞は許されない。
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