経済制裁にはそもそもパワーがなかった。
さて、まず、少し長くて恐縮なのだが、筆者の過去の拙文を読んでいただきたい。「経済制裁で拉致解決は困難」という趣旨で、04~05年に毎日新聞などいくつかのメディアに書いたものの要旨である。事態が膠着することを予測したのだが、残念ながら、それは現実のものとなってしまった。
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「拉致問題は解決済み」という北朝鮮政権の不誠実な態度に対する被害者家族のいら立ちと怒りは察するに余りある。家族・支援者から「さらなる圧力をかけるべき」との意見が出され、経済制裁を発動すべしという論議がにわかに始まった。
しかし、拉致問題解決に経済制裁は本当に有効なのか。政治家やメディアからも一層の圧力を求める声が高まっているが、緻密な分析や議論もなく「感情」と「勢い」に流され、外交も言論も浮遊していると思えてならない。「経済制裁という圧力をかければ、北は折れてくるはず」という主張は、貿易統計を見ても根拠が薄い。

03年度の対北朝鮮貿易実績は、韓国、中国の2国で約7割を占めるが、日本は送金を含め1割強にしかならない。
「日本が経済制裁をすれば金正日政権は崩壊する」という荒唐無稽なことを平然と語る政治家がいるが、そのような主張は幻想か扇動というほかない。
経済制裁を発動しても、北朝鮮は「痛い」と感じても、回避に奔走するほどのダメージはないのが現実だ。

北朝鮮への影響力が強い韓国、中国に制裁への同調を呼びかけても、対北朝鮮政策の優先順位が異なるため、拉致問題だけで同調する可能性はゼロと言っていい。

日本には金正日政権に外交方針を変更させる即効性のある外交的、経済的パワーはない。それが現実なのだ。
それでも万が一、経済制裁を発動した場合、北朝鮮は制裁の解除を2国間協議開催の条件としてくることが予想される。日本が拳を振り上げている間は次の協議に応じないだろうし、日本は拳を引っ込めるための名分が必要になる。膠着状態が一層長引く可能性が高い。(続く)
【石丸次郎】
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