銃の整備をする訓練中の国境警備隊兵士。咸鏡北道茂山(ムサン)郡。2004年8月中国側から石丸次郎撮影(アジアプレス)

銃の整備をする訓練中の国境警備隊兵士。咸鏡北道茂山(ムサン)郡。2004年8月中国側から石丸次郎撮影(アジアプレス)

 

中国国境に勤務する警備隊は、密輸業者から賄賂をもらったり、中国への脱北・越境に眼をつぶるかわりに「通行料」を徴収したりする不正腐敗行為が90年代後半から横行していた。はなはだしきは、中国側の人間と組んで、麻薬密売、脱北ブローカーとして活動する者や、内部情報を外部に提供する場合もあった。このような兵士の問題行為を監督するのが、部隊内の保衛指導員、政治指導員だ。
問題を上部に報告されると、問題の程度によって処罰を受けることになるが、次のような段階があるという。

1.階級降格、別部隊への移動
2.生活除隊(問題があって勤務期間未了での除隊措置。社会復帰しても党員になれず配置に不利益が生じる)
3.鍛錬隊、教化所送りそして最悪のケースは
4.銃殺に処された、もあるといわれる。
「キム中尉を殺害した2人は、党員になって士官学校に行くことが決まりかけていたのだが、上部に不正行為がばれて霧消してしまった。報告を上げたのがキム中尉だということがわかって復讐したと聞いた」
と、取材協力者は伝えた。

中国国境に勤務する警備隊員は、不正行為に加担するかわりに、住民たちから賄賂を受け取ることができる「いい職場」であったが、2004年頃から統制と処罰が厳しくなり「収入」が大幅に減少していた。
現場兵士の待遇悪化は深刻で、軍隊内の不満が高まっていることが、今回の上官殺害事件の背景にあると思われる。 【石丸次郎】

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