◆後援会長の息子採用 専門家は「違法で不当だ」と指摘
橋下大阪市長が条例まで作って採用した特別秘書の奥下剛光氏は、「橋下徹後援会」会長の息子である。これは情実採用ではないのか?橋下市長に直撃した。
(ラジオフォーラム リ・シネ)

橋下徹 大阪市長(撮影 粟野仁雄)

 

「奥下氏が後援会の有力者の息子だから、特別秘書に採用したのではないのですか?」
3月11日に大阪市役所で行われた会見で、私は質問した。
「全然問題ない。『特別職』だから。秘書としての能力が特に優れていた、それでいいじゃないですか」
橋下市長は憮然とした表情でこう答えた。

記者「勤務実態の状況を可視化させることはできないのですか?」
橋下市長「しませんよ、そんなこと。『特別職』なんだから」
「特別職だから」を橋下市長は連発する。特別職は、勤務実態がなくてもいいものなのかと、疑問に思った。

奥下特別秘書はどのような仕事をしていたのか?私は、市長への取材に先だつ3月8日、大阪市市役所秘書課に直接問い合わせをした。ます、奥下剛光特別秘書への取材を申し込んだが、多忙のためと断られた。次いで、同秘書課へも取材を申し込んだところ、文書で回答したいとのこと。そのため、質問状を送付した。内容は次のとおりだ。
(1)奥下剛光特別秘書の勤務状況について、現在、勤務内容や出退勤タイムカードは記録されていますか?されているとすれば、いつからされるようになりましたか?
(2)衆議院選挙のあった昨年12月、奥下剛光特別秘書は勤務していましたか?それとも休職されていましたか?
(3)奥下剛光特別秘書は大阪市の職員としてどんな仕事をしていますか?

これに対する秘書課の回答は次のとおり。
(1)市長の秘書の職は地方公務員法第3条第3項第4条に規定された特別職にあたり、同法に規定のある勤務時間その他の勤務条件についての適用はなく、出退勤時間は記録しておりません。また、秘書は市長に随時、業務報告を行い、意思疎通が図られていることから、日々の勤務内容は記録しておりません。
つまり、タイムカードなどに出退勤時間は記録されておらず、秘書の動向を把握しているのは市長だけということになる。
(2)本人からの申し出により、平成24年11月16日~平成24年12月16日の間、休職としておりました。
(3)中央官庁、各政党、市会各派、その他市長からの特命事項に関わる連絡調整を主たる業務としております

先の橋下市長のコメントについて「政治資金オンブズマン」の阪口徳雄弁護士は次のように批判する。
「副市長も『特別職』にあたりますが、副市長の勤務実態については決裁した書類などが多数見られる。ところが奥下特別秘書についてはこれが一切ない。こんなもん、誰が考えても信用できませんよ」

「政治資金オンブズマン」共同代表の阪口徳雄弁護士

 

奥下剛光特別秘書の採用そのものもが「不当な条例による採用」だと阪口さんは指摘し次のように述べる。
「もともと、この条例の制定も採用ありき。本来は大阪市の職員なら試験が必要だが、特別秘書ならそれが必要ない。また、後援会幹部の息子であるから恩返しができる。実に低俗なやり方で、違法であり不当。だから支払われた給与を返還するように求めた」
前述のとおり、奥下特別秘書は、政治団体「橋下徹後援会」会長の奥下素子さんの息子なのである。
阪口さんは
「『橋下徹後援会』が4年間に集めた資金は1億2500万円。主にパーティ券斡旋で集めています。そのうち奥下一族の4名で3500万円、3割近くになる。後援会を支えているのは奥下一族であり、その恩返しのために奥下剛光氏を雇ったのではないか」
と情実縁故採用の疑いを指摘している。

橋下市長は今や、第2野党である「維新」の共同代表であり、もちろん大阪市のトップでもある。政治的に重要なポジションにいる人物であることは間違いない。情実人事の疑惑をぬぐうべく、奥下特別秘書の採用の経緯、勤務実態について、速やかに明らかにし市政の透明性を高めてもらいたい。

※ 詳細資料 (PDFファイル)
住民監査請求書
公開請求に対する大阪市の「不存在による非公開決定通知書」
「橋下徹後援会の政治金収支報告書」 2008年度分
「橋下徹後援会の政治金収支報告書」 2009年度分
「橋下徹後援会の政治金収支報告書」 2010年度分

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