日本に来て今年で8年目を迎える脱北者のリ・ハナさんに、これまでの日本での生活、そして自身の心の軌跡を振り返ってもらった。(取材・整理 大村一朗)

日本入りした脱北者として初めて大学を卒業したリ・ハナさん。写真:金慧林
日本入りした脱北者として初めて大学を卒業したリ・ハナさん。写真:金慧林

 

◆社会を見る目が持てるまで

:日本に来た当時から今まで、日本社会に対する見方はどのように変わってきましたか?
:日本にやってきた当初は、言葉の問題と、生活のために働くことで頭がいっぱいで、日本社会がどうとか考えている余裕はなかったです。

遊びにも行けないし、新しい出会いもほとんどない。限られた人間関係の中で、バイト先と夜間学校とアパートを往復するだけの毎日でしたから。ただ、テレビをつけると、そこには北朝鮮とは違う社会があることを感じました。

北朝鮮では、事故や殺人のニュース、スポーツの国際試合で負けたニュースなどはほとんど流れませんけど、日本のテレビでは毎日のようにそういうニュースがいくらでもあって、政治家の汚職のニュースまであります。何だか北朝鮮より殺人が多いのかなあと最初は思ったけれど、こういう報道そのものが社会の違いなんだと新鮮に感じました。

最初はそんな日本の報道を、全部鵜呑みにしていました。悪く取り上げられている人は悪い人なんだと。それが大学に入って、授業から多くのことを学ぶなかで、何でも鵜呑みにしてはいけないということを学びました。

日本の報道でも、多角的に見て、自分で判断しなければいけないんだと。大学で日本の歴史を学んだことも、今ある日本社会を理解する助けになりました。

資本主義にも正と負の部分がある。人間の生きるところには、多かれ少なかれ共通点もある。そんなふうに思えるようになると、日本社会をもっと楽しい目で見られるようになってきました。北朝鮮でマインドコントロールされていた思考から抜け出し、自分の頭で考えられるようになったんだと思います。
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