幼稚園児もアクロバットな演目を披露。練習で怪我をする子も少なくないという。 写真は「アリラン」と称する前の1995年の集団体操。撮影 石丸次郎

幼稚園児もアクロバットな演目を披露。練習で怪我をする子も少なくないという。
写真は「アリラン」と称する前の1995年の集団体操。撮影 石丸次郎

 

◇生徒児童を訓練に長期動員 体罰も茶飯事
2002年、故金日成主席の90歳の誕生日を記念し制作された「アリラン」は、芸術家、学生、軍人、労働者、そして幼稚園に通う子どもまで10万人が参加して行われる。特に、「背景台」と呼ばれるカードを使ったマスゲームに動員される学生だけでも1万5000人を超える。
公演は実行委員会によって1年以上前から準備される。実行委員には、労働党の職員から内閣の全部署の代表ならびに、保安部(警察)、保衛部(情報機関)、検察などの治安・司法機関の代表たちが参加する。

公演を行う構成員の大部分は学生たちだ。小学生、中学生、大学生はもちろん、多数の幼稚園児も含まれる。彼らは公演を準備する間は、午前中だけ授業に参加するのだが、本番が近づくにつれ、学校を休んで終日練習するようになる。寒かろうが暑かろうが、天気に関係なく、訓練に狩り出されるのである。
学生たちは自由に訓練を休むこともできない。

訓練に不参加だったり、真面目に行っていないと見なされること自体が、政治的な問題として扱われ、強い批判を受けることになるからだ。いかに熱心に公演準備に臨むかで、金親子に対する忠誠心と尊敬心をチェックされ、評価されるのである。加えて、実際の公演でのミスも、場合によっては「反党、反革命的行為」と規定される。幼い子どもの場合も同様だ。批判の矛先は担任教員や父兄にまで及ぶことになる。

訓練期間中、学生たちに対する扱いは酷い。公演指導教員による暴言と暴力は当たり前だ。特に、幼稚園児や小学生などの子どもたちは、指導教員の指示をうまく理解できないことも多く、頻繁に叩かれることになる。子どもたちの心身にとって、強い苦痛とストレスであることは言うまでもない。また、基本的に栄養状態が良くない学生たちが、毎日7、8時間も訓練させられるため、関節を痛める場合が多かった。続く(ペク・チャンリョン)
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