論点(3) 拉致に対する対価と、遺骨・日本人配偶者などの問題の対価を区分しているのか?

この度の日朝合意では「昭和20年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨および墓地、残留日本人、いわゆる日本人配偶者」を含めた包括的かつ全面 的な調査をするとしている。つまり、拉致問題、行方不明者問題と、遺骨と他の在朝日本人の問題の「抱き合わせ」である。拉致以外の問題が調査の対象となっ たのは日朝協議の大きな成果である。期待する人たちも多く進展させていかねばならない。そして日本による植民地支配の被害に対する償いを協議するきっかけ にしなければならないと思う。

2012年8月に始まった死亡日本人の埋葬地探しと遺骨収集作業は、北朝鮮側が誠意を持って当たってくれたという評判が多い。北朝鮮側も経費負担が 少なくなかったはずである。今後、遺骨の収集や日本への引渡しについては、経費の支払いが議論されることになる。また、その他の残留日本人及び孤児が日本 に渡航するとなれば経費もかかる。日本側には、当然経費精算の義務がある。

しかし、これらの経費支払いの問題と、拉致問題の進展を抱き合わせにして「見返り」として一括支払いをするようなことはあってはならない。拉致問題と非拉致事案ははっきり区分し、遺骨収集等々の経費は明細を示して精算されるべきだ。

遺骨収集事業に関しては、すでにその利権をめぐる動きが日本国内で活発になっているようだ。怪文書も飛び交っている。拉致問題の対価であるのに、非 拉致事案の経費と一絡げにし、まるで「抱き合わせ販売」のようにして、現金を北朝鮮側に渡す、そんな疑念が生まれないように、両者の区分を明確にして「明 朗会計」を徹底すべきである。
論点(4) 支援に対する国際社会の憂慮

昨年2月に金正恩政権が実施した核実験に対して、現在、国際社会は安保理決議を経て経済制裁中である。これは、大量破壊兵器関連物、ぜいたく品の輸出禁止と、大量破壊兵器関連の資金移動の禁止、大量破壊兵器関連の団体個人の資産凍結である。

今回の日朝合意で、日本政府は独自の経済制裁を解除していくことを約束した。この人道援助名目の「見返り」供与が、安保理決議に基づいて取っている制裁措置の実効性を弱めるのではないか、そんな憂慮の声が韓米から上がっている。

政府は人道支援名目の「見返り」の中身が何であり、解除していく独自制裁と、安保理制裁の線引きを明確にすべきである。現金供与が後者に抵触するのは明らかだ。前述③のような形で現金支払いがあるのではないか、韓米は疑念を持っているようである。

食糧の供与についても、間接的な資金供与と同様の効果がある。なぜなら現在の北朝鮮を食糧不足と捉えるのは適切ではないからだ。圧倒的に足りないのは外貨である。
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