12月14日投開票される衆院選も終盤戦。自民党の大勝ムードが喧伝されるなか、自民党に逆風が吹き荒れているのが沖縄だ。11月16日の知事選 で、米軍普天間基地の名護市辺野古への移設反対を訴えた新人の翁長雄志氏(64)が現職の仲井真弘多氏(75)に10万票差をつけて圧勝。衆院選でも、辺 野古移設の是非を最大の争点として、翁長氏を支えた「オール沖縄」候補らが、自民党候補らと4選挙区全てでぶつかり合う。中でも4区は、かつて師弟関係に あった2人の一騎打ちという因縁の対決。全国的にも注目の選挙区だ。(新聞うずみ火 栗原佳子)

2007年、教科書検定意見撤回を求める県民大会。実行委員長としてあいさつする仲里さん。右手に翁長さんの顔も見える(筆者撮影)

2007年、教科書検定意見撤回を求める県民大会。実行委員長としてあいさつする仲里さん。右手に翁長さんの顔も見える(筆者撮影)

 

◆「辺野古」めぐり「師弟」が対決

「あの沖縄戦を体験した者として、戦争につながるものは全てノーです。普天間の危険性除去というが、辺野古の新基地計画は、戦争のできる基地をつくるということ。ウチナーのアイデンティティーで翁長知事とともにスクラムを組み、堂々と反対していきたい」

12月6日、沖縄・宮古島市のホール。沖縄4区に立候補した無所属新人、仲里利信氏(77)が個人演説会に臨んだ。沖縄戦体験からにじむ平和への強 い思い、1500坪の畑でサトウキビや野菜を育てる現役のハルサー(畑人)としてTPPに断固反対する信念、沖縄をないがしろにする日本政府への怒り ――。熱のこもった訴えが終わると、満席のフロアから万雷の拍手が送られた。

知事選からわずか5日後の衆院解散。翁長氏の勝利を後押しした「オール沖縄」、すなわち社民、共産、生活などの各党と県議会会派の県民ネット、保守系の那覇市議会会派、経済界有志らによる保革を超えた枠組みは、衆院選にもそのまま引き継がれた。

「全選挙区から国政で新知事を支える議員を」と1区共産赤嶺政賢氏(66)、2区社民照屋寛徳氏(69)、3区生活の玉城デニー氏(55)のそれぞ れ前職を「オール沖縄」候補として支援、4区は県議4期、かつて自民党県連顧問も務めた県政界の重鎮、仲里氏に立候補を要請した。

仲里氏は2007年、11万人規模で開かれた高校歴史教科書の検定意見撤回を求める県民大会の実行委員長を務めた。当時県議会議長。沖縄戦の史実を歪めようとする動きに対抗し、超党派の大会を実現させた。

仲里氏の対抗馬は自民前職、西銘恒三郎氏(60)。仲里氏自身が後援会長として支えてきたベテラン議員だ。西銘氏は一昨年12月の前回の衆院選で返 り咲き、昨年4月、「県外移設」の公約を翻して「辺野古容認」へ転換した。仲里氏はこれに抗議して後援会長を辞任。師弟同士の対決は、翁長氏が、かつて選 対本部長として支えた仲井真氏を相手に闘った知事選と似た構図である。

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