国は2013年から3回にわたって段階的に生活保護基準を引き下げてきた。その結果、受給額を引き下げられた人々が、全国各地で取り消しを求める裁 判を起こしている。大阪でも51人の受給者が立ち上がり、「生活保護基準引き下げ違憲訴訟」に加わった。(矢野宏/新聞 うずみ火)

生活保護基準引き下げ違憲訴訟・大阪弁護団事務局長の和田信也弁護士「生活保護受給者だけの問題ではない」(撮影/矢野宏)

生活保護基準引き下げ違憲訴訟・大阪弁護団事務局長の和田信也弁護士「生活保護受給者だけの問題ではない」(撮影/矢野宏)

◆「一人の人間として」

大阪で古本屋を経営していたAさん(75)も原告の一人だ。9年前に立ち退きを命じられて店を畳んだ。その後、生活保護を受け、一人暮らしをしているという。
保護費は月11万7000円で、家賃を払うと手元に残るのは7万円ほど。食べるだけで精一杯だという。

「生活保護が切り下げられる一方で、消費税が上がり、物価も上がり、最低限の生活をするのが難しい。この4月、3回目の引き下げで月1230円減 り、長年読んでいた新聞をやめた。冬場もストーブも使えず、厚着をして毛布2枚でしのいでいる。ぜいたくしていないのに、なぜ切り下げるのか。政府は声を 上げにくいところから削ろうとしていると思い、裁判を決意しました」

このほか、生活保護受給者からは「1日の食事を2回に減らし、おかずもなし」「風呂も3日に1度、冬場は1週間に1度」などという切実な声が弁護団に寄せられている。

原告の一人で、新聞うずみ火読者の角南広子さんも「住宅扶助費は月4万2000円が上限と決められていますが、枠内では到底足りず、生活費から1万円ほどを回さなければならない」という窮状を抱えている。

「私の障がいは、常に身体が緊張し、身体の力を意識しても抜けない状態にあります。医師からはバランスの良い食事を取るよう、言われていますが、お 肉や魚、野菜などは高くて食べられません。昨年、思い切って1回だけウナギを食べました。それも、買ってきた小さなウナギをもったいないと思い、2回に分 けて食べたのです。その時、情けなくて情けなくて仕方がありませんでした。生活保護を受けている人間は、ささやかな娯楽や趣味も持ってはいけないのでしょ うか。私は障がいがあろうとも、一人の人間として生きていきたいのです」

「生活保護基準引き下げ違憲訴訟」大阪弁護団事務局長の和田信也弁護士は、「生活保護を受けている人のほとんどは障がい者や高齢者。病気や障がいなどの関 係で、節約とか工夫とかできない人もいます。憲法25条では『健康で文化的な最低限度の生活』を営むことが保障されていますが、文化面から削っていき、そ れでも足りない分は食事とか、お風呂とか、健康面を削っているのが実情です」と語る。

厚生労働省によると、生活保護の受給者は今年1月現在約217万人で、過去最低だった1995年の2.5倍。生活保護費が年間3兆8000億円に膨 らんでいる。貧困が拡大する中で、「生活保護受給者は恵まれている。ぜいたくを許すな」という「生活保護バッシング」が吹き荒れている。和田弁護士は、 「生活保護費の引き下げは利用者だけの問題ではない」という。

◆ 「国民生活が沈む」

「生活保護基準は、就学援助基準や住民税の非課税基準、国民健康保険料や介護保険料の減免基準などと連動しており、今まで無税だった人が課税された り、非課税だと安くすんでいた負担が増えたりする可能性も出てきます。生活保護基準が下がれば、社会保障制度全体が下がり、国民生活の土台が沈みます」

今回の生活保護基準の引き下げで67億円。これだけで終わるはずがない。国の狙いは医療や年金など社会保障制度の見直しだとしたら、受給者を切った刀が次に向けられるのは私たちの生活である。
(おわり)

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