◆戦禍を繰り返してはいけないという歴史の教訓

真田さんは、1999年に周辺事態法が、2003年に武力攻撃事態法が、04年に米軍行動円滑化法が制定され、船員・航空機乗務員・港湾労働者・鉄道員な ど運輸関係の民間労働者が、米軍や自衛隊の軍事活動すなわち戦争の兵站(政府は「後方支援」と主張している)部門に組み込まれて、軍事物資や兵員などの輸 送業務に従事させられる制度がつくられたことを、非常に憂慮していました。

周辺事態法には、海外での紛争が日本の平和と安全に重要な影響を与える場合、アメリカ軍の軍事作戦への、民間企業による「後方支援」=兵站の規定があります。

日本が直接武力攻撃される「日本有事」の場合の米軍行動円滑化法にも、同じような規定が盛り込まれました。

「日本有事」に関する武力攻撃事態法にも、自衛隊への民間企業による「後方支援」=兵站の規定があります。

つまり、船員・航空機乗務員・港湾労働者・鉄道員など民間労働者が、企業の業務命令を通じて、米軍や自衛隊に協力させられることになる制度になっているのです。

法律上は個々の労働者に対する強制ではありません。政府が企業に協力を要請するというかたちをとります。

しかし、被雇用者にとって処分覚悟で業務命令を断るのは難しいので、事実上、戦争協力への動員を強いられる可能性が高いわけです。

船員の場合、戦時中と同じように兵員や軍事物資の輸送が想定されます。そうなると再び戦没船員が出るおそれもあります。

だから、船員の労組である全日本海員組合は、「船員徴用で多くの犠牲者が出た戦禍を繰り返してはいけない」として、周辺事態法や武力攻撃事態法や米軍行動円滑化法に反対してきました。

今回の「戦争法案」にも、民間企業による自衛隊や米軍への「後方支援」=兵站の規定が、同じように盛り込まれています。

しかも、集団的自衛権の行使容認にもとづくわけですから、日本が直接武力攻撃される「日本有事」の場合に限らず、時の政権の判断しだいで自衛隊は事実上、世界中どこでも出動する可能性があります。

周辺事態法では法律上、「周辺」の範囲を示す規定はないものの、政府の国会答弁などで東アジアの範囲を出ることはないと解されていました。

しかし、周辺事態法を改名する「重要影響事態法」では、「周辺」の言葉は消え、「重要影響事態」という曖昧な概念のもと、時の政権の判断しだいで米軍への「後方支援」=兵站の活動は世界中どこでも可能とされます。

そうなると、民間企業による自衛隊や米軍への「後方支援」=兵站の活動範囲は拡大することになります。当然、危険度も格段に高まるでしょう。

「戦争法案」をめぐる国会審議では、自衛隊員の戦死のリスクが高まる点は論議に上っていますが、自衛隊員が米軍とともに他国の人びとを殺傷して戦争の加害者になってしまう問題は、重大なことなのにあまり論議されていません。

同じように重大な、労働者が自衛隊支援や米軍支援の戦争協力を迫られ、戦争やテロに巻き込まれて死傷するリスク、個人の思想や良心に反して戦争協力を強いられる人権侵害などの問題点も、ほとんど言及されていません。

しかし、こうした問題にも目を向けるべきです。戦火の海に消えていった戦没船員の歴史からも汲み取れるものがきっとあるはずです。 続きを読む>>

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書籍 『検証・法治国家崩壊 ~砂川裁判と日米密約交渉』 (吉田敏浩)