原子力が、嘘で塗り固めた過剰な宣伝文句を国民に刷り込むことで推進されてきた構造は、先の大戦で大本営発表を鵜呑みに、国民が戦争に突き進んだ構造と酷 似している。歴史に学ぶことなく、日本中に原発が造られるに至った経緯を、元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんが語った。(ラジオフォーラム

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

◆原子力推進という挙国一致ができるまで

日本だけで200万人、日本を含めたアジア全体では2000万人もの人が死んだという戦争がついこの間、70年前まで続いていました。日本では、現 人神の天皇がいて、戦争になんか絶対負けないとずっと言われてきました。マスコミは大本営の発表だけを流し、多くの国民は日本が勝つと思って戦争という時 代は過ぎていきました。原子力も戦争中の大本営と本当に一緒だと思います。巨大な権力が一体となって、嘘の宣伝をずっと流し続けてきたからです。

原子力発電は絶対に安全で事故なんか起こさないと言われてきましたが、本当に残念なことに福島第一原子力発電所の事故は起きてしまいました。しかし これまで原子力が絶対安全だ、良い物だと言ってきた人たち、政治の場の人たちもそうだし、東京電力にしてもそうですが、誰一人として処罰されないというこ とが続いています。

なぜこんなことになったか。権力犯罪というのは、より巨大な権力によってしか処罰されないということなのだと思います。かつての戦争の時もそうでし た。日本の権力よりも巨大な米国という権力が、どういう形で処罰するかということを勝手に決めていったわけです。今の原子力発電の事故も、私は権力犯罪の ひとつだと思っていますが、それ故に、誰も処罰されることなく、のうのうと生き延びていくという形になっているんだと思います。

一体彼らが原子力にどんな期待をかけてきたか。あるいは、国民にどんな期待をかけさせようとしてきたか。それを示すひとつの宣伝を今から見て頂きま す。1954年という、日本で原子炉建造予算が初めて国会を通過した年、その頃のこれは毎日新聞ですが、他の新聞もほとんどみんな同じようでした。こんな ふうに宣伝していたのです。

『さて原子力を潜在電力として考えると、全くとてつもない物である。しかも、石炭等の資源が今後、地球上から次第に少なくなっていくことを思えば、このエネルギーの持つ威力は、人類生存に不可欠な物と言ってよいだろう』

すでに明らかになっている事柄ですが、原子力の燃料であるウランというのは、非常に貧弱です。それが生み出せるエネルギーに換算すると、石油の数分 の一しか地上にはないし、石炭に比べれば数十分の一しかないというまことに馬鹿げた資源です。そんな物に未来のエネルギー源の夢を託すという、そのこと自 身が間違えていたのです。

さらにこの新聞記事では、『電気料は2000分の1になる』と続きます。なるわけないですし、さらにこうです。

『原子力発電には火力発電のように大工場を必要としない。大煙突も貯炭所もいらない。また毎日、石炭を運び込み、炊き殻を捨てるための鉄道もトラッ クもいらない。密閉式のガスタービンが利用できれば、ボイラーの水すらいらないのである。もちろん山間へき地を選ぶこともない。ビルディングの地下室が発 電所ということになる』