着物を着て、京都の町を散策したイラク人女性シーランさん。「美しく、平和な日本がうらやましい」と何度も話していた(2015年11月下旬 玉本英子撮影)

着物を着て、京都の町を散策したイラク人女性シーランさん。「美しく、平和な日本がうらやましい」と何度も話していた(2015年11月下旬 玉本英子撮影)

 

大阪を訪れたシーランさんは、東大阪市の意岐部東小学校6年生と交流授業を行なった。児童らにスライドを見せながら、自身もイラン・イラク戦争で避難民と なった経験を語り、戦争の悲惨さについて話した。シーランさんは元学校教師だ。「教育は、食べ物や水と同じように人にとって大切。教育を受ける機会がな かった若者たちが、まず過激派組織に引き込まれていきました」

児童からは、いくつもの質問がシーランさんに向けられた。「なぜ、戦争をとめられないの?」「危険なのになぜ逃げないの?」。言葉に詰まりながらも彼女は答えた。「戦争は一度始まると止められない。困っている人がいれば、誰かが助けの手をさしのべなければ」

児童が日課として教室の清掃をしていたことに驚いた。「日本人が学校やものを大切にする心は、こういうところから生まれるのですね」

京都では和服を借りて、清水寺を歩いた。「日本では当たり前のような平和も、戦争が続くイラクから見ると、うらやましい。どうか平和を壊さないで」。シーランさんはそう話した。【玉本英子】

(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」12月付記事に加筆修正したものです)

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