107人が亡くなり、562人が負傷したJR福知山線脱線事故から4月25日で11年を迎えた。兵庫県尼崎市の事故現場近くにある献花台では、遺族やけがをした人たちが朝早くから訪れ、犠牲者に追悼の祈りを捧げた。(矢野宏/新聞うずみ火)

JR福知山線脱線事故現場。事故から11周年を迎えたこの日、事故が起きたのとほぼ同じ時刻に現場を通過した電車は、速度を落とし、追悼の警笛を鳴らした(2016.4.25撮影/矢野宏)

JR福知山線脱線事故現場。事故から11周年を迎えたこの日、事故が起きたのとほぼ同じ時刻に現場を通過した電車は、速度を落とし、追悼の警笛を鳴らした(2016.4.25撮影/矢野宏)

◆事故現場保存と撤去で揺れる遺族

2005年4月25日、JR福知山線の快速電車が時速116キロで減速しないまま現場カーブに進入して脱線。線路脇の9階建てのマンションに衝突した。

国土交通省の事故調査委員会は、運転士のブレーキ操作の遅れが原因としつつも、懲罰的な「日勤教育」やおろそかにされてきた安全対策など、JR西日本の企業体質を問題視した。これを受けて、JR西日本は今年4月、乗務員の人為的なミスを懲戒処分の対象外とする制度を導入した。

現場では、事故が起きた午前9時18分とほぼ同じ時刻に通過する電車が減速し、追悼の警笛を鳴らしながら通り過ぎていった。現場の線路沿いでは遺族や負傷者、JR西日本の社員、関係者らが1分間の黙祷を捧げたあと、献花台で焼香し手を合わせた。

現場のマンションでは今年1月から足場が組まれ、5階から9階部分を撤去し、4階部分までを階段状に残してアーチ状の屋根で覆う工事が進められている。

工事は遺族らの意向を確認して始められたが、「保存」を求める声と「撤去」を主張する声に分かれ、4階部分までを残すのはいわば折衷案。
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