農民市場と闇市場が混然一体となって大増殖。工業製品も当たり前に売られるようになった。1998年10月江原道元山市にてアン・チョル撮影(アジアプレス)

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◆市場の拡大はどのようにもたらされたのか

2-1 闇市場経済との農民市場の結合
社会主義を標榜してきた北朝鮮では、食糧、農産物以外の消費物資の生産は国営工場で行い、最終消費者に物資を供給販売するのは、一部の協同組合の運営する商店を除き国営商店であった。その間の流通は、国営企業の「商業管理所」が担ってきた。

地方行政機関にあたる人民委員会の中の商業管理課が運営する国営商店では、衣料品から石鹸、タバコ、食器、飲料、酒、野菜や魚などの副食まで、主食の穀物以外の物資を国定価格で販売した。国営商店で物資を購入するには、味噌、醤油、ビールなどの食品は「食料品供給票」が、その他の一般物資の場合は「商品供給票」が必要であった。

「1970年代前半まで、国営商店に行けば飴玉も石鹸も魚も買えたが、徐々に少なくなり、1980年代になると、国営商店にほとんど物が並ばなくなり、たまに副食が販売されるというと、我先に買おうと、人の上に人が乗って争う有り様になった」
年配の脱北者に共通する証言である。

コメやトウモロコシなどの主食は協同農場で生産され、正式には「糧政事業所」と呼ばれる配給所で15日に一度ずつ国定価格で販売された。労働者も学生も子供も、職場を持たない主婦も引退した老人も、一日にあたりの食糧供給のグラム数が決められた。個人で食糧を売買することは犯罪とされ固く禁じられた。国家が食糧を一手に独占管理するこの配給制度は、「糧政」と呼ばれた。

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