沖縄本島北部の東村高江で、米軍北部訓練場のヘリパッド(ヘリコプター離着陸帯)建設が7月に再開されて3カ月が過ぎた。安倍首相は9月26日の臨時国会所信表明演説で「沖縄の基地負担軽減に力を尽くす」として年内に完成させると表明。全国から動員した機動隊員が抗議する非暴力の市民たちを力づくで排除する中で4基のヘリパッド工事が同時に強行されている。そんな中、高江の抗議行動に立つ芥川賞作家の目取真俊さんが10月18日、大阪府警機動隊員に「土人」と罵られた。目取真さんに聞いた。(整理/新聞うずみ火栗原佳子)

◆機動隊の差別意識が映すもの
臨時国会の所信表明演説で安倍首相自らが公言した通り、安倍政権は年内でヘリパッドを完成させるつもりです。一国の首相がなんの確信もなく言うわけがありません。また、首相がそう言ったからには、警察庁も防衛省も全力をあげて工事をするはずです。

沖縄県警に加えて、大阪をはじめ東京、千葉、神奈川、愛知、福岡から約500人の機動隊が派遣されています。たかだか4、50人で対抗できるわけがありません。例えばこちらが100人集まったとしても、7、8割は団塊の世代や年金生活者で、女性も多いです。それが屈強な20代、30代の機動隊員に力づくで押さえこまれて排除されたらお終いです。
関連写真:高江の工事地区の地図と抗議行動する市民と機動隊

機動隊を上回る人数がいないと、物理的に考えて止められるわけがありません。人が増えないことにはどうしようもないです。もし本当に「工事を止めたい」「やんばるの森を守りたい」という気持ちがあるとしたら、現地に行ってください。

しかし、残念ながら高江は遠いです。大阪からは大変だと思います。ただ、旅費がかかるのは我々も一緒なんですね。例えば自分は名護から通っていますが、ガソリン代は往復するだけで1500円、長距離を走ると2000円を軽く超えます。週1万円、1カ月で4万円。ガソリン代だけでも大変な額を、自腹を切って何とかやっています。本も読めない。仕事もできない。そういった環境の中で何年もやってきました。そうせざるをえないのです。沖縄にいたら。知らんふりするわけにいかないから。

高江の集落を囲むように、計6基のヘリパッドが作られようとしています。N4地区とN1地区はメガネのように2基ずつ、H地区、G地区はそれぞれ1基。N4地区は完成しています。

北部訓練場の約半分を返還するから、そこにあったヘリパッドをこれから使う訓練場に移設しなさいというのが返還の条件です。新しいヘリパッドが出来ないと返さない。家を借りていた人が、それを返すかわりに新しい家を作れなんて言いますか? 借りたものは返すのが当たり前です。それを平然と言うのが米軍で、それを唯々諾々と受け入れるのが日本政府です。そのために、反対する市民を力づくで押さえつけ、国家の暴力装置をフル稼働させて、やっと工事をすすめているのが現状です。

高江は、工事の現場自体は小さいですが、範囲が広いので、沖縄県警だけでは対応できません。こんな小さなヘリパッドを作るために、あんな山奥にわざわざ県外から凄まじい数が来る。異常だという感覚がなければおかしいです。辺野古の前に、まずは高江のヘリパッドを、反対運動を潰して完成させようという意気込みが、この500人という数にあらわれていると思います。

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