道の真ん中を堂々と行く牛車。 2012年11月平安北道新義州市にて撮影アジアプレス

 

北朝鮮では、牛は、それはそれは大切にされる生き物である。

貨物自動車もガソリンもまったく不足している北朝鮮では、農場や企業所、軍隊でも、荷車を引き畑を耕してくれる牛は貴重な労働力なのである。

時には、人の命が牛より軽んじられることすらあった。北朝鮮全土を大飢饉が覆い尽くした1990年代後半、飢えた人が空腹に耐えかねて、こっそり牛の尻尾を切って食す事件がしばしば発生した。

牛は国有財産である。個人が勝手に売買、処分されることは許されなかった。それを毀損したとして、見せしめに死刑になることがあったと、多くの脱北者が証言している(秩序維持のための例外的な強硬手段だったと思われるが。
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数年前から、農民たちに牛の個人所有が認められるようになった。まるでトラックを貸し出すように、料金を取って牛をレンタルに出して現金を稼ぐ人が出現している。

老牛は肉にして市場で売る。一般の市場では、これまで牛肉はまったく売られることがなかったのだが、最近は珍しくないという。ただし、あまりにも固くて人気はないそうだ。(石丸次郎)

北朝鮮第三の都市である清津市中心を行く牛車。都市でも貴重な労働力だ。石炭を運んでいるようだ。2013年9月清津市にて撮影アジアプレス

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