汐凪さんの父、紀夫さんの避難先、長野県白馬村での催し。汐凪さんを思い、仲間でつくる子どもの遊び場「汐笑庵(じゃくしょうあん)」は今年中の完成を目指す。(2014年8月 長野県白馬村にて撮影:尾崎孝史)

 

◆そしていま、汐凪さんを思い、仲間でつくる「汐笑庵(じゃくしょうあん)」

紀夫さんと仲間は、毎年汐凪さんの誕生日にあわせて催しを続けてきた。今年は8月19日に長野県白馬村で行う。

「汐笑庵(じゃくしょうあん)」はメンバーの一人で美術家の小池雅久さん(53)が設計し、みんなで作った。子どもたちが集う遊び場として年内の完成をめざしている。

紀夫さんと仲間は震災翌年から様々な取り組みを行ってきた。まきを効率的に燃焼できる「ロケットストーブ」作り。鹿を解体して自然の恵みを体感するワークショップ。手で火を起こし、エネルギーのことを考える催し。汐凪さんが縁となり集った人たちは、紀夫さんと対話を重ねながら、普段の暮らしや社会のことに向き合った。

「みんなと言葉を交わすことで、木村さんの表情がどんどん変わってきた。汐凪ちゃんの捜索にも確信を持てたんじゃないかな。僕らも、何となく違和感を覚えていた世の中のことを声にすることで、木村さんと一緒に変われた。それが大きい」。小池さんはそう振り返る。(了)

(※初出:岩波書店「世界」2017年4月号)

<筆者紹介>
尾崎 孝史 おざき たかし 
1966年大阪府生まれ、写真家。リビア内戦の撮影中に3・11を迎え、帰国後福島を継続取材。AERA、DAYS JAPANほかでルポを発表。著書に「汐凪を捜して 原発の町 大熊の3・11」(かもがわ出版)、「SEALDs untitled stories 未来へつなぐ27の物語」(Canal+)。

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