◆「分かち合う」
南相馬市原町区にある「カリタス南相馬」は、ボランティアや視察団の宿泊施設であり、地域の人々の交流スペースでもある。社会福祉活動と災害復旧支援を行うカトリック系団体カリタスジャパンを運営母体とし、東日本大震災後、被災3県に置かれた8つのボランティア宿泊施設(ベース)の一つとして2012年6月に設置された。現在の施設は2016年に新築・移転されたものだ。

私がこの施設を訪ねた翌日は月曜日で、あいにく野外でのボランティア活動の休止日だった。そのような日でも、施設内でのサロン活動、交流のある市民団体での活動、施設の菜園の手伝い、隣接する幼稚園の居残り保育の手伝いなどに参加することができる。私はこの日、前夜から施設に宿泊していた秋田県の学校法人の先生方のご厚意で、かれらの視察バスに同乗させてもらった。

視察を終えた午後は、カリタス南相馬の菜園の草取りを手伝ったあと、サロンで催される「眞こころサロン」に参加させてもらう。仮設住宅から復興住宅へ移った人の中には、仮設住宅時代の集まりを懐かしむお年寄りも多く、ここでは、そうした人たちに再会の場を提供している。

はぎれを利用して小さな草履のストラップを作りながら、世間話に花を咲かせるお年寄りたちの席に混ぜてもらった。原発事故で故郷を追われ、いくつもの避難所や仮設住宅を転々とし、いま復興住宅に移ったばかりのかれらに、故郷の村や町への帰還を問おうとして、私は思わず口をつぐんだ。

眞こころサロンがお開きになった夕刻、サロンの一角に椅子が円形に並べられ、スタッフ、教会のシスター、ボランティアたちが一堂に会す。簡単な自己紹介と、今日一日の活動の感想をひとことずつ述べる「分かち合い」の時間だ。

カリタス南相馬では、朝はラジオ体操に始まり、震災被災者のために祈りを捧げる朝夕のミサが、隣接する教会で行われる。それらへの参加は任意だが、毎晩の「分かち合い」と食事を共にすることは決まりとなっている。「分かち合い」は、他のカリタスベースはもちろん、多くのキリスト教団体でも実施されている。経験や思いを一人で抱え込まず、伝え合い、共鳴させることで、新たな気づきにつなげるのだ。

ここでの食事は、施設の菜園で獲れた野菜を使った、シスターやスタッフの手料理が中央のテーブルに盛られ、ブッフェ型式で各自食べたいものを取ってゆく。本当にどれもおいしく、自然に隣の人と話が弾む。食後の片づけも共同作業だ。

◆必要ないと言われる日まで
カリタス南相馬は、南相馬市だけでなく、今年4月から避難指示が解除された浪江町の社会福祉協議会からもボランティア派遣の要請を受けている。家屋の整備や、南相馬市の復興住宅への引っ越し作業など、浪江町での活動実績も増えていると畠中千秋所長は言う。

その一方で、運営母体であるカリタスジャパンからの助成期限は2021年までだという。地域からの支援要請や県外からの視察もまだまだ増える見通しの中で、「必要ないと言われるまでやりたい。助成が終わった後も何とかこの施設を人的、経済的に維持し、存続させなければなりません」と強い決意をにじませた。
ボランティアが「必要ない」と言われる日。ここで活動するすべての人が、その日が訪れるのを心待ちにしている。(おわり)【大村一朗・アジアプレス】

◆カリタス南相馬:連絡先
電話:0244-26-7718 HP: http://caritas.ctvc.jp

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