◆「清掃」作業が「無届け」のアスベスト除去だった可能性が浮上

市建築課によれば、除去業者の2人が防じんマスクと防護服を着用し、はしごを入れて内径60センチメートル、高さ5.3メートルの煙突内を「清掃」した。現場を負圧に保ち、アスベストの外部への流出を防いで除去する、負圧除じん装置は稼働させなかった。

作業時に市職員は立ち会っていない。夕方、作業が終わってから煙突内を目視確認したが、暗いため上の方まで見ることはできなかった。しかし、元請けから「上から下まで確認して清掃した」と報告を受けたので問題ないとの見解だ(ただし、市環境対策課は防護服の着用はなかったと説明)。

ところが、この4月12日の「清掃」作業が「無届け」のアスベスト除去だった可能性が浮上している。

アスベスト除去工事を実施する場合、労働安全衛生法(安衛法)や安衛法石綿障害予防規則(石綿即)、大気汚染防止法(大防法)で、作業開始より一定期間前に届け出ることが定められている。

たとえば、吹き付けアスベストなど、いわゆる「レベル1」に該当する場合、いずれの規制でも作業「開始の日の14日前まで」に所管する自治体や労働基準監督署に届け出なくてはならない。

今回の煙突内のアスベスト含有断熱材など「レベル2」の除去などの作業では、大防法はレベル1と同じく「作業の開始の日の14日前まで」、石綿即では作業前にそれぞれ届け出ることが義務づけられている。

届け出義務者は安衛法や同石綿即では事業者だが、大防法では発注者だ。つまり、今回の除去工事は堺市建築課が発注した工事なので、建築課が届け出義務を負う。

堺市は政令指定都市のため、大防法の届け出先となるのは同じく堺市環境対策課となる。同じ市役所内で容易に手続きできるわけだ。

市環境対策課に確認したところ、市建築課が提出していた煙突内のアスベスト除去工事の届け出期間は2017年3月4日から同3月30日まで。煙突内を「清掃」した同4月12日はその期間外だ。

大防法に計画変更の届け出義務づけはない。そのため、市環境対策課は「軽微な変更であれば、電話などの連絡でもよい」と説明する。

◆環境部門は「清掃」知らされず

市建築課から養生撤去が遅れる変更は「そのつど(口頭で)出ている」と市環境対策課は話す。ただし記録はなく、手続き日や延長日数など詳細は不明といういい加減さだ。

一方、4月12日の「清掃」については事前に「聞いてないです」と市環境対策課は明かす。

そうであるなら「無届け」作業に該当し、大防法違反ではないのか。

市環境対策課は取り残したアスベストの除去であれば「届け出が必要」と話すが、4月12日の「清掃」は「念のために清掃を行うもので、アスベストの除去作業ではない」との見解だ。

しかし、この「清掃」作業はアスベストの残存を考慮した作業にほかならない。だからこそ、「念のため」なのだ。

そもそもワイヤブラシを用いた作業は通常アスベスト除去作業の「仕上げ作業」である。

環境省の「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル2014.6」には〈特定建築材料(吹き付けアスベストなど)を除去後、必要に応じてワイヤブラシ等研磨用具を使用して下地に付着している材料を擦り落とす〉と「除去作業における留意事項」で説明されている。

しかも「発じん量が多い」、つまりアスベストの飛散が多い作業であると明記されている。そのため、粉じん飛散抑制剤を空気中に散布することや負圧除じん装置のフィルター交換をこまめにすることなどを求めている。

つまり、ワイヤブラシによる研磨作業はアスベストの除去作業にほかならない。そのうえ、アスベストの飛散が多い、危険性の高い作業であることが国のマニュアルでも解説されている。

市環境対策課にこうした指摘をしたところ、「原則的にはかき落としをする除去作業とか封じ込め、囲い込みでなければ、特定建築材料(吹き付けアスベストなどの)排出作業に該当しない」「清掃ですので、アスベストはないという中で掃除をした」と法違反はないことを強調する。
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