高濃度のアスベストが使用されていた煙突。横引き煙道が見落とされる調査ミスが見つかった(井部正之撮影)

◆混合分析は法違反の可能性も

アスクの担当者は「解体の時に2つをわけて除去するのは困難なので同一建材として(混合)分析した」などと釈明した。

日本環境は「採取場所が近く同一材料に見える。12個も混ぜてなんやと思われるかもしれないが、(混合で)精度のばらつきが押さえられる」と主張した。

隣地に住む今井奈保子さん(38歳)は説明会で「見落としがあった以上、改めて(現在の実施機関ではない)信頼できる第三者機関に調査や測定をしてくれるとか、(除去作業)終了時に確認してもらうとかないと不安はぬぐえない」と要望した。

市財産活用課はそうした対応はしないと明言。指摘を受けた内容は再分析して問題なかったので1月25日までに着工する方針を示した。

しかし、そうした強引な着工は問題があるのではないか。

今井さんが指摘するように、調査や分析の信頼性にすでに疑義が生じているのは事実だからだ。

説明会でも指摘したが、調査をしたアスク、分析をした日本環境が「問題ない」と主張する混合分析については行政機関は軒並みそうした見解が間違っていると指摘しているのだ。

大気汚染防止法(大防法)や大阪府生活環境の保全等に関する条例(府条例)に基づき、現場を監督・指導する権限を有する大阪府環境管理室事業所指導課は12月14日、守口市に対して複数の建材を混合せず再分析するよう指導している。北大阪労働基準監督署は指導の有無は明かさなかったが、「同一材料でなければ別々に分析すべき」と説明する。

厚生労働省化学物質対策課の小林弦太中央労働衛生専門官はこう明言する。

「基本的にわけて分析すべきです。労働安全衛生法で石綿の定義は0.1%超の『製剤その他の物』とある。岩綿吸音板と石こうボードは別の建材ですから、当然わけて分析しなくてはならない。混合して分析した場合、『製剤その他のもの』に則って分析していないので石綿障害予防規則(石綿則)第3条第2項の違反が問われうる」

また、仕上げ塗材を12検体混合した件についても、「階ごとにわけるほうが自然だと思います。2、3階の建材が同一材料だと合理的に考える根拠が必要。見た目だけでは合理的に2階と3階の仕上げ塗材が同じ建材と判断する根拠にはならない。改修履歴や設計図書などをふまえて総合的に判断していただきたい。必要があれば通達で周知します」と小林専門官は指摘する。

つまり、岩綿吸音板と石こうボードなど複数の異なる建材の混合分析はよほど特殊な事情がない限り石綿則違反である。12検体の混合分析は違法とまではいえないかもしれないが、不適正であることは間違いない。

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