横田基地に着陸しようとする米軍C130輸送機(2018年撮影・吉田敏浩)

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◆駐留外国軍隊への国内法の原則適用は国際常識

米軍という外国軍隊により主権が侵害され、そして憲法で保障された人権も侵害されている。

故翁長雄志前沖縄県知事が米軍基地による被害に苦しむ沖縄の状況を踏まえて発した、「日本国憲法の上に日米地位協定があり、国会の上に日米合同委員会がある」という言葉どおりの現実が、沖縄だけでなく日本全体を覆っている。

安倍内閣は、山本太郎参院議員の質問主意書への答弁書(2017年)で、日米合同委員会の合意は「地位協定の実施の細則を定める取り決めであることから、その内容について国会の承認を得る必要があるとは考えていない」と答弁した。

だが、そうであってはならないはずだ。
横田空域のような外国軍隊の手に委ねる空域の存在を許さず、米軍機の訓練飛行にも制限を加えているドイツやイタリアのように、現状を改めていくのが望ましい。

2018年7月、各都道府県の知事から成る全国知事会は、初めて地位協定の抜本的見直しを求める提言を、全会一致で採択し、政府にも要請した。

その「米軍基地負担に関する提言」では、地位協定は「国内法の適用や自治体の基地立入権がない」など、日本にとって主権の確立が「十分とは言えない現況」だと指摘した上で、こう求めている。

「日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則として米軍にも適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立入の保障などを明記すること」

米軍に対し必要な規制をかけて人権侵害などを防ぐためには、地位協定を抜本的に改定し、基地の運営などに「必要なすべての措置をとれる」米軍の排他的管理権を見直すなど、米軍への国内法の原則適用を明記する必要がある。

しかし、日本政府は改定に後ろ向きだ。
「運用の改善」と称する小手先の対応ばかりで、米軍の特権を見直す姿勢はない。

しかも、駐留外国軍隊には特別の取決めがない限り受け入れ国の法令は適用されない、との見解を示す。これでは規制のかけようがない。

だが、駐留外国軍隊への国内法の原則適用は、実は国際的な常識なのである。

沖縄県がドイツ、イタリア、ベルギー、イギリスに調査団を送り、日米地位協定と比較してまとめた「他国地位協定調査報告書(欧州編)」(2019年)によると、各国では米軍に対し航空法や環境法令、騒音に関する法令など国内法を原則適用している。

低空飛行訓練も高度、飛行時間、訓練区域などに関し規制をかけている。

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