同じく見落とされていた天井ダクト裏の吹き付けアスベスト。4月の説明会で市が示した写真より

◆調査ミスの原因究明せず

事前調査はアスク・サンシンエンジニアリング(横浜市)に所属するJATI協会(旧日本石綿協会)の民間資格「アスベスト診断士」取得者が実施していた。ところが、いずれの階の機械室についてもアスベスト「なし」と報告。吹き付けアスベストの取り残しに気づいていなかった。

上記のほかにも、同社による調査報告書では堺市で問題になった煙突の横引き煙道(ボイラーとつなぐ部分)について一切記載がなく、調査ミスとみられた。あきれ果てるほかないずさんさである。

ところが同社は「後で調査をすることになっており見落としではない」などと反論した。

しかし報告書にはそもそも調査項目として横引き煙道が挙げられておらず、注記もなかった。壁の木材やコンクリート、窓のガラスまでそれぞれ1項目として記載しているのに、アスベストが含まれる可能性の高い横引き煙道が除外されているのは不自然きわまりない。

おまけに未調査箇所の記載が報告書に一切ないうえ、市側に説明もされていなかった。当時再調査の予定も組まれていなかった。市が横引き煙道についての調査の必要性を知らされたのは筆者らの指摘後であることを当時担当課は認めている。こうした状況から調査ミスの可能性が濃厚だ。

仮に同社の説明が事実とすれば、アスベストの飛散につながりかねない未調査箇所の存在というきわめて重要な事実をあえて報告書に記載せず、説明もしていなかったわけだ。発注者を意図的にだます虚偽の報告書を提出していたといわれても仕方あるまい。同社はどのように釈明するのか。

こうした経緯も含め、なぜこれほどの調査ミスが起きたのか同社に説明を求める質問状を送ったが、回答はなかった。

調査項目に横引き煙道が記載されていなかったことについて、市財産活用課は「あとから調査する場合、事前に伝えておくべきだった」と認める。ただし、「調査ミスに違いないと断言はできない」との見解だ。

工事発注前に市がおおよその発注金額の積算のために委託した分析なしのスクリーニング調査でも、上記の機械室における吹き付けアスベストに加えて、内壁・柱の仕上塗材についても多数見逃されていた。

機械室の工作物(設備)には可能性ありとしていたが、機械室の壁などの吹き付けアスベストの除去残しについては調べたかどうかの記載がなく、そもそもその可能性を疑った気配がみられない。その結果、これら機械室の設備以外は「分析の必要性なし」「可能性なしと判断」と報告書でその可能性が考慮されていない。

一応報告書の特記事項に〈非破壊での調査のため壁の裏側などの見えない部分については判断しておりません〉とある。よって、設備裏や隠ぺい部は調査していないことが明記されている。しかし、実際には目視で確認できる部分の吹き付けアスベストの除去残しについても見落とされており、解体設計のために実施されたアスベスト使用の可能性調査としては失格ではないか。少なくとも吹き付けを過去に除去した機械室については、解体前の正式な事前調査で取り残しがないことを調べるよう明記する必要があったのではないか。

また内壁・柱の仕上塗材については、一部調査できなかった可能性もあるが、未調査箇所が明記されていないことも問題だろう。厚生労働省の技術指針(当時)はアスベストを含む建材などの「使用箇所、種類等を網羅的に把握」することを求めている。さらに公的資格「建築物石綿含有建材調査者(調査者)」の講習において「未調査範囲などの記録」は最重要事項の1つとされ、調査できなかった理由とともに明記することが求められている。なお、今年7月の石綿障害予防規則(石綿則)改正で網羅的な調査は同規則に位置づけられ、技術指針(9月改正)から削除された。