羅先市を中国側から撮影。豆満江の朝中両岸共に有刺鉄線が張り巡らされている。2019年9月に石丸次郎撮影

◆中国のコロナ状況次第だが…

北朝鮮が対中国貿易の3月からの再開に向けて動き始めたようである。新型コロナウイルスの流入を阻むために、昨年1月末に中国国境を閉鎖して人とモノの往来を強く制限して1年余り。物資不足と経済麻痺が深刻化する中、金正恩政権は過剰なコロナ対策の緩和に動くのか。(カン・ジウォン/石丸次郎

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咸鏡北道のある都市に住む取材協力者A氏が、2月22日に伝えてきたところによると、清津(チョンジン)市の道貿易局の幹部らが来訪し、貿易会社に対し3月から中国貿易を再開する準備を始めるように指示があったとし、次のように述べた。

「輸入の最優先は営農資材。肥料、殺虫剤(農薬)、温室用のビニール、農機具の部品、備品を輸入する準備を進めよと伝達した」

また咸鏡北道の別の都市に住むB氏も、「3月から羅先(ラソン)で貿易が再開される見込みだという情報が広がり、中国産品の市場の価格が下がっている」と伝えてきた。

さらに、中国遼寧省丹東市の複数の中国人貿易商も、アジアプレスの取材に、「3月か4月かはっきりしないが、貿易が再開される見込みだ」と述べた。

北朝鮮地図(制作アジアプレス)

◆播種、田植えまで時間がない

コロナ防疫を最優先としたため、北朝鮮の2020年の対中貿易額は前年比80.7%減、経済制裁が強化される前の2016年比では約90%減少した。必要な物資以外の輸入を金正恩氏の指示で大きく絞ったことと、外貨収入の激減が響いている。

生活必需品や医薬品、生産資材の不足が深刻化し、工場設備や車両の補修部品も中国から入って来ず、経済は麻痺状態に陥っている。困窮した人の中には病気と飢えで亡くなる人が出ている。

北朝鮮政府が貿易再開を急ぎたい最大の理由は、3月から主食のトウモロコシとコメの営農準備を始めなければならないためだ。欠かせないのは肥料。「自力更生」「自給自足」のスローガンを掲げる金正恩政権は、平安南道の順川(スンチョン)市にリン肥料工場を完工させるなど、肥料の国内生産に注力してきたが、軌道に乗っているかは不明だ。

「国産の肥料は質が悪い。農場員たちは、『国産肥料は人糞などで作る堆肥にも劣る』と言っている。個人で畑を耕す人たちが求めるのも中国産だ」と、前出のA氏は言う。