関西電力は労働安全衛生法(安衛法)で譲渡が禁止されているアスベスト(石綿)が含まれた設備について調査もせず売却していただけでなく、過去の同様事例について十分調査していないことが明らかになった。(井部正之)

関西電力が調査せず売却したアスベスト使用巻上機(同社提供)

◆15年超不適正でも調査3年だけ

2018~2020年度の過去3年間で長野県や岐阜県の水力発電所において、ダムからの放水量を調節する「洪水吐ゲート」を取り替える設備更新工事3件で、「ゲート(開閉のための)巻上機」に基準(重量の0.1%)超のアスベストが含まれるブレーキライニング(摩擦材)が使用されていたにもかかわらず、調査もしないまま鉄くずとして売却していたことを同社は8月2日に発表した。安衛法で禁止されたアスベストを含む製品の譲渡に当たる可能性が高い。

原因について同社は、「水力発電部門でアスベスト含有の可能性がある設備の把握や、その旨を設備へ掲示する仕組みがなかった。関係法令の知識が不足していたため、設備におけるアスベストの含有有無を確認しないまま譲渡した」などと説明し、再発防止に努めるとしている。

問題は、少なくとも水力発電部門において、アスベストを管理する仕組みが存在していなかったことだ。その結果、これまで様々なアスベスト関連の不適正工事が起きていたことが強く疑われるが、同社調査は直近の3年間だけ。しかも巻上機を撤去した同種工事に限定している。

アスベストの使用などは2006年に原則禁止されており、15年あまり違法な対応が繰り返されてきた可能性がある。またそれ以前からも現場への掲示義務などは存在しており、不適正な対応は以前から何十年と続いてきた可能性すらある。

同社は8月6日筆者の取材に対し、そうしたアスベストをめぐる様々な不適正対応の実態調査について「検討中」と答えた。その後改めて今後の調査方針を尋ねたが18日、「継続して検討している」と繰り返した。このまま放置されれば、問題の全容は闇に葬り去られてしまう。

長野県の寝覚(ねざめ)発電所木曽川えん堤(同県木曽町)における不適正事案で同社の報告を受けた松本労働基準監督署に追加調査を指導したのか聞いたが、「個別の指導内容をお答えすることはできない」と指導の有無も含めて回答を拒否した。

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