◆児童の曝露リスク知らせず

さらに問題なのは、いまだに児童らがアスベストを吸ってしまった可能性を適切に知らせていないことだ。

じつは日置荘小学校と八田荘小学校の2校については「少なくとも」2015年ないし2016年から天井板の一部が欠損・破損していた。

八田荘小学校では廊下の天井板3枚(90cm角)の一部(約30cm×270cm)が破損し、天井裏が見える状態だった。ただし倉庫として利用されており、児童の立ち入りはないとしている。

とくに懸念されるのは、点検口のふた(45cm角)が欠損していた日置荘小学校だ。

教室は放課後に学童保育のような形で利用されていた。天井裏の吹き付け材は経年劣化しているため、その欠片が天井裏や教室内に振動や空気の流れによって少しずつ落ちるなどしてアスベストが飛散し、児童が吸わされていた可能性がある。

しかも点検口の欠損はもっと以前からかもしれないのだ。市によれば、施設点検は3年ごとだが、記録の保存年限が5年で廃棄され、それ以前の状況はわからないという。市は「それ以前から(天井の一部が)なかった可能性がある」(学校施設課)と認める。

市は9月17日~20日に現場で空気中の濃度測定を実施し、(アスベスト以外も含む)総繊維数濃度が空気1リットルあたり1本未満だったとして安全性を強調する。市に確認したところ、点検口を開けた状態でも測定しており、それも含めて上記の数値だったという。
しかし測定は窓を閉め切って中に誰も入らないようにして実施しており、児童らが教室内で駆け回ったりして振動がある、実際の使用時と状況が大幅に異なる。

過去のアスベスト飛散事故でいくつものリスク評価に参加してきた専門家であるNGO「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」所長の名取雄司医師は、「ふたがあいている状態で、子どもが活動しているのと同じ状態で測らないと意味がない」と断じる。

さらに市は世界保健機関(WHO)の報告書の記載と称するアスベスト曝露が空気1リットルあたり1~10本程度なら「健康リスクは検出できないほど低い」なる「濃度基準についての記載」を発表資料に「引用」。「WHOが示している数値と比べて、低い」と主張している。

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