◆第三者の専門家による検証必要

ところがこの記載は実際の報告書には存在しない、ねつ造といってよい代物だ。しかも内容は嘘っぱちだ。環境省なども以前こうした記載を「引用」していたが、筆者の指摘でねつ造が発覚し、それ以降使わなくなっている。

そもそも1~10本のアスベストを曝露し続けた場合、発がんリスクはざっくりいって1万人に1人から1000人に1人レベルで上昇する。これは国の委員会などでも報告されていることだ。ちなみに1000人に1人という発がんリスクは、日本では仕事で日常的に曝露する場合の基準である。堺市は子どもらに労災レベルのアスベスト曝露をさせても問題ないとでもいうのだろうか。

2016年に堺市が発注した北部地域整備事務所の改修工事では隣接する保育園の児童がアスベストを吸わされた可能性があるとして問題になった。このときは屋外作業だったうえ、ある程度距離があったことや作業時とその後数日程度の曝露だった。しかし今回は長期間の曝露であり、濃度が低かったとしてもより深刻な可能性がある。

現状は、実態を反映しているとは言い難い、ずさんな調査で無理やり“安全宣言”をしているようにしかみえない。

名取医師はこう指摘する。

「アスベストの飛散がない状況と比べると中皮腫などの発がんリスクが上がった可能性があります。低濃度のアスベストのリスクについて中立的に判断できる専門家が関与して、きちんと検証することが望ましいと思います」

市は9月24日に市長をトップとするアスベスト対策推進本部に「市立小学校におけるアスベスト含有建築対策チーム」を設置した。市教育委員会に児童らがアスベストを吸っている可能性を指摘したところ、否定せず「(対策チームで)児童らの曝露リスクなども検証する」(学校施設課)と回答した。

だが、9月30日の会見で永藤英機市長は、この件については記者からの質問に答えただけ。これほどの重大事にもかかわらず、児童らのアスベスト曝露リスクに触れてすらいない。隠しているのか、それとも伝わっていないのか。

市の発表は児童らがアスベストに曝露した可能性について適切に公表しているとは言い難い。市は保護者らに対する説明会を開催し、改めて発表し直すべきではないか。両校の当該教室の使用履歴を詳細に調べることも必要だろう。そのうえで適切な専門家が参加する第三者委員会を設置して、曝露リスクを検証する必要がある。

会見で永藤市長は今回の件で対策チームを立ち上げた理由を「対処を適切に行うため」と説明した。だが対策チームで勝手な検討結果を出せばよいというものではない。まさしく適切な対処が必要であり、市長のガバナンスが問われている。