大阪・堺市の小学校でアスベスト(石綿)を児童らが日常的に吸っていた可能性があるとして始まった有識者による健康リスクの検証で“昭和”の時代における曝露が議論になった。ところが、懇話会の座長や市は調査に消極的だ。数十年前の曝露は調べる必要すらないのか。(井部正之)

1月31日に開催された堺市・懇話会のようす

◆工事後天井裏にアスベスト放置か

堺市では日置荘小学校、登美丘西小学校、八田荘小学校、福泉小学校の4校で体育館3階天井裏のはりに耐火材として吹き付けアスベストが使用されていることが2021年7月、新たに発覚した。うち2校で天井板の一部が少なくとも2015年ないし2016年から欠損、破損していたなど、児童らが日常的にアスベストを吸っていた可能性がとくに懸念される。

市は2021年11月にこれら児童らのアスベスト曝露や健康リスクを検証する懇話会(座長:東賢一・近畿大学医学部准教授)を設置。同12月から検討を開始した。第1回懇話会は4校すべてを検証の対象とすることに合意した。

4校とも昭和50年代の改修工事で間仕切り壁を撤去。天井裏に吹き付けアスベストの破片が散乱していることが市が委託した第三者機関「建築物石綿含有建材調査者協会」の専門家による調査で判明している。

1月31日に開催された第2回懇話会では、大阪アスベスト対策センター幹事の伊藤泰司委員が「日置荘小学校は(アスベスト含有)吹き付け材が2メートルくらい、たぶん以前の工事ではがしたんでしょうね。それが天井の上に落ちたままになっている」と現場の状況を説明。そして、こう続けた。

「現在の検証は数字的に出せると思うけど、過去にどうだったのかも可能な方法で検討していく必要があるのではないか。アスベスト被害は時間が経ってあらわれるわけですし、その当時たくさんの子どもたちがいた状況が想定できるわけですから、現在と過去の検証、両方いるんじゃないか」

前出・調査者協会の所見でも、「吹き付けの劣化と損傷が多く見られ、天井裏に断続的な細かな落綿(吹き付けアスベストの落下)と、過去の工事やドアの開閉の振動が原因と考えられる大きな落綿が見られた」と裏付けている。

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