北朝鮮地図(製作アジアプレス)

◆価格鎮静に躍起の当局

一方の当局はというと、食糧の高騰に神経を尖らせて価格統制に躍起になっている。役人が市場を回って商人の値付けを監督し、買い占めが起こらないように1人当たりの購入量を制限している。高値で販売しようとする者に対しては没収も辞さない強い態度だという。

卸売りの業者に対しても同様だ。両江道の協力者は現状を次のように説明する。

「安全局(警察)の機動隊まで動員している。買い占めや闇取引を取り締まるため、検問で食糧を運ぶ車を止めて、『購買履歴』を確認するのだ。どこで手に入れたか不明な場合は無償没収までする徹底ぶりだ。恵山(ヘサン)市にある鋼鉄工場の労働者配給用の食糧を運んでいた車が検問で停められ、個人取引と疑われてあやうく没収されそうになったということもあった」

ビジネスで食糧を売っていると商人たちは、当然自衛する。市場に出ずに家で売ったり、個人間で直接取引したりする。取り締まりに遭遇すると、「売り物ではなく自分たちで食べる分」だと言い逃れするのだそうだ。

◆当局の介入で高騰に拍車の批判も

このような当局の市場介入のせいでむしろ価格が上がったと、協力者たちは批判する。家庭で必要な分量の食糧を買うことができず、流通を強く統制すれば、値段は上がるしかないというわけだ。

咸鏡北道の協力者は、当局が食糧の値段を上げているようなものだとして、次のように問題を指摘する。

「6月以降、中国からの支援食糧が南浦港に大量に入ったという情報がある。それらがまず平壌や軍隊優先に配られるのは当然だが、(国の統制のため)一向に地方に回って来ない。貿易商社はいろいろ食糧を保有しているが、今は卸売り業者への販売を禁じられている。そのため商人の元にコメが届かず市場が活性化しないのだ。当局は、買い占め防止とコロナ防疫を口実にしているが、食糧高騰の原因を作っている」
(続く)
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

 

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