2021年に発行された臨時金券「トンピョ」。写真を入手した脱北者から提供を受けた。(アジアプレス)

◆自国通貨への不信増大

北朝鮮国内の対中国元、米ドルの実勢交換レートが大きくウォン安に振れている。

アジアプレスでは一週間に1度、主に両江道(リャンガンド)と咸鏡北道(ハムギョンプクド)で外貨交換レートを調査している。これは非公式の市場相場である。

調査した取材協力者によれば、7月29日に1元=880ウォン、1米ドル=7900ウォンを付け、北朝鮮ウォンは今年最安値を更新した。2022年初に1元=635ウォン、1ドル=4700ウォンだったので、中国元は39%、米ドルは68%も上昇したことになる。

元、ドルが続伸している理由について、調査した取材協力者は「中断されていた中国との貿易再開が迫っていて、貿易会社が必死になって外貨を集めているため」と説明した。国際的な米ドル高の影響もあるが、輸入代金確保の動きの影響が大きいという。

価値が下がる一方の通貨ウォンに対する不信も強くなっている。

「外貨使用に対する取り締まりがすごく厳しいにもかかわらず、商売人たちは内貨の紙幣をできるだけ持たないようしている。皆、外貨への執着が一層強くなった。『トンピョ』も市場で扱われなくなった」

協力者はこのように述べた。(カン・ジウォン

※「トンピョ」とは、朝鮮中央銀行が発行する臨時の金券(クーポン)。資金難に苦しむ金正恩政権が2021年8、9月頃に発行した。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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