(参考写真) 銃の整備をする訓練中の国境警備隊。2004年8月中国側から石丸次郎撮影

◆親子で逃亡図るが栄養失調で走れず

北朝鮮北部の咸鏡北道(ハムギョンプクド)の茂山(ムサン)郡で11月22日頃、男性2人が国境の川・豆満江を越えて中国に逃亡しようとして失敗し逮捕される事件があったことがわかった。現地の取材協力者が11月下旬に伝えてきた。

この協力者によれば、「逮捕された男性2人は親子で、父親の方が栄養失調で走れずもたもたしていて捕まった」という。

豆満江上流に位置する茂山郡は、かつては朝中国境随一の脱北ポイントだった。だが2000年代後半から警備が厳しくなり、2015年頃にまず中国側で有刺鉄線が設置され、その後北朝鮮側の川辺も有刺鉄線が張り巡らされた。

中国側から見た北朝鮮・茂山郡の中心部。左奥の雪化粧した山が鉄鉱山。2012年11月に撮影パク・ヨンミン(アジアプレス)

◆住民に対し「脱北に容赦はない」と通達

「捉えられた2人は、『カバー』もなく渡河しようとして捕まったそうだ。公開か非公開かはわからないが銃殺すると聞いた。人民班会議でも『これからは中国に越境する者に容赦はない』と住民に伝達した。恐怖を植え付けるためだ」
協力者はこのように伝える。

※「カバー」とは、幹部や軍人のつてを頼ったり賄賂を渡したりして、違法行為を見逃したりほう助したりしてもらうことを言う。
※人民班は最末端の行政組織で、概ね20~30世帯程で構成。町役場に相当する洞事務所からの指示を伝達し、住民の動向を細部まで把握して当局に報告する役割を担っている。

新型コロナウイルスのバンデミック発生後の2020年8月、金正恩政権は社会安全省(警察)名義で布告を発表。許諾なく国境の河川に接近する者は無条件に銃撃を加えると宣言していた。

地方都市では経済麻痺で住民の困窮が著しく、10月以降、密輸や中国への逃亡を図って摘発される事例が相次いでいる。中国との国境地帯は、現在午後6時以降の夜間外出が禁止されている。(カン・ジウォン

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

アジアプレスが入手した20201年8月の「布告文」の一部。「国境に接近する者は無条件に射撃する」と書かれている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

 

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