2022年度の環境省調査で吹き付け材などの除去作業のうち、3分の1で空気1リットル中1本超のアスベスト(石綿)が外部に漏えいしていた。ずさんな工事が続いている実態が垣間見える。(井部正之)

2023年2月に開催された環境省アスベスト大気濃度調査検討会の資料の一部。この資料から関連する測定データを抜き出して独自に漏えい率を調べた

◆「通告」調査でも3分の1漏えい

同省が毎年実施している大気中の石綿濃度の測定結果を筆者が独自に調べた。2022年度のデータは同省が2月15日に開催したアスベスト大気濃度調査検討会(座長:山﨑淳司・早稲田大学理工学術院教授)の資料に含まれる。

2022年度同省は、全国40地点の計98カ所で大気中における石綿を含む可能性のあるすべての繊維「総繊維数濃度」を調べているが、そのうち改修・解体現場は計5地点。作業場をプラスチックシートで隔離し、内部を減圧するなどしたうえで、加圧式の全面マスクや防護服を着用して厳重な対策で実施する吹き付け石綿など、いわゆる「レベル1~2」に該当する作業は3地点だった。

まず新潟県の解体現場では負圧隔離された作業場から作業員が出入りする「セキュリティゾーン」出入口で空気1リットルあたり1.7本の石綿を含む可能性のある繊維「総繊維数濃度」を検出。だが、走査電子顕微鏡(SEM)による詳細分析で、石綿の含有はないことが確認されている。

残る千葉県の解体現場2地点のうち、1地点では同1本超の漏えいは確認されなかった。もう1地点については、負圧隔離された作業場から作業員が出入りする「セキュリティゾーン」出入口で最大で同68本を検出した。SEMによる詳細分析で実際にクロシドライト(青石綿)とアモサイト(茶石綿)が同38本検出している。そのため3地点中1地点(33.3%)で1本超の石綿の漏えいが確認されたことになる。

2010年度以降の測定データから同様に年度ごとの漏えい率を調べると、2022年度を加えた13年間で累計37.3%と高止まりしていることがわかる。

同省調査で重要なことは、件数は少ないものの自治体から推薦を受けた現場について事業者の同意を得たうえで、事前に立ち入り日程を通告して実施していることだ。

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