◆石綿漏えい4割弱でも対応なし

事業者はきちんと届け出など必要な法手続きをして、真面目に取り組んでいる。だからこそ国の測定に同意したのだ。当然、あらかじめ知らされた日程の測定に備えて万全の準備をして望んでいる。にもかかわらず、4割近くで石綿が外部に漏えいしているのだ。抜き打ち検査すれば、間違いなくもっとひどい結果となるだろうことは同省検討会の委員もかねて認めている。

同省検討会ではこうしたデータのまとめや考察をしておらず、この“惨状”について評価もしていない。この深刻さが同省の毎年の発表からは伝わらない。

2020年の石綿規制改正では、作業時の飛散・ばく露防止対策についてはほぼ強化していない。むしろ規制緩和した部分すらある。現場作業としてはほとんど変わっていないのが実態だ。

石綿飛散事故だらけの現実を踏まえて、いまだ放置されたままの除去業者の許認可制や作業場内外の徹底した測定による業務管理などを早急に法令で義務づける必要がある。実地研修すらない除去作業者の講習制度見直しも重要だ。多くの課題がいまだ先送りされている現実に改めて目を向ける必要がある。

いま手を打たなければ、今後も作業者や現場周辺の人びとの石綿被害が拡大していくことになりかねない。吹き付け石綿が使用された可能性のある建物の解体ピークが目前に迫っており、浪費する時間はない。

【資料】環境省調査にみる各年度のアスベスト漏えい率

 

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