(参考写真)寒空に一人で杖を突いて歩く老婆に声をかけた。「80歳。生活が苦しくなって息子夫婦から出て行ってくれと言われた」と答えた。2011年2月平壌市郊外にてキム・ドンチョル撮影(アジアプレス)

◆当局は対策を指示するだけ

私の暮らすアパートの倉庫に3世帯が住んでいる。万策尽きて家を売って他人の倉庫を間借りしている人たちだ。恵山市の党組織から人が来て、家の売買は不法だとして、元の家に戻そうとしたが、今度は家を買った人が行く所がないと泣き喚いて大騒ぎになった。
※北朝鮮のアパートには各戸むけの小さな倉庫が併設されている。

今年1月から、家を失って他人の家の倉庫や、公共の場で寝泊まりしている者をすべて把握して対策を講じるよう、恵山市の労働党委員会が指示を出した。放浪している者、倉庫やほら穴などに住んでいる者が対象だ。党直々の指示なので、行政の幹部が駆け回っているが、生活が困難なのをどうやって解決するのか。対策なんかないようなものだ。

◆「コチェビ」が凍死や餓死

〇咸鏡北道(ハムギョンプクド)の茂山(ムサン)郡からの報告。

1月の大寒波の時に、外で凍死した人の死体があちこちで発見された。「コチェビ」たちは風よけを張っただけ寒空の下で寝たり、畑のトウモロコシの藁に潜り込んで寝たりするが、それで凍死したのだ。

郡の中心部でも貧窮する人が大変多くて、市場に「コチェビ」の姿が増えた。私の住むアパートの前にも「コッチェビ」たちが座っている。飢え死にする人もいるが、死ぬのはほとんどが扶養する身寄りがいない子供か高齢者、そして病弱者たちだ。

 

〇咸鏡北道会寧(フェリョン)市からの報告。

春になって「コチェビ」がたくさん出現している。死ぬ子供もいる。先日、〇〇里の橋の下で女の子が死んでいるのが発見された。ぼろを被っていたので死体だと気づかなかったのだが、匂いがひどくて死体だと分かったそうだ。私はたまたま遺体を処理するところを通りかかって見ていたのだが、川のそばを適当に掘って埋めていた。

最近は若い人たちにもお金が無くなって「コチェビ」に転落したのがいる。検挙しても食べ物を探していると答えれば、役人にはどうしようもない。住んでいた地域に引き渡しても、何もあげられないし家もない。それでまた出てくる。彼らは大人なので、強盗をしたり人を殴ったりするのではないかと怖がる人が多い。

 

〇平安北道(ピョンアンプクド)の新義州(シニジュ)市からの報告

あちこちで「コチェビ」の姿を見るようになった。子供の場合は、救護所や中等学院(孤児院)に収容するが、食事が粗末なのですぐに逃げ出してしまう。街中で物乞いをしているけれど、もう食べ物をあげる人はほとんどいない。自分たちがしんどいから。可哀そうに、最近では建設中の建物や道端で子供が死んでいたという話をしばしば聞く。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

 

 

 

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