大阪市の中央卸売市場本場(同市福島区野田)西棟ではりや天井の吹き付け材から国の基準を超えるアスベスト(石綿)が検出された。7月14日、発表内容を記者に説明(レクチャー)し、質問も受け付ける市の「記者レク」後、メディアが一斉に報じた。しかし、問題の本質まで踏み込んだ報道が見当たらない。(井部正之)

アスベストが「浮遊していない」と強調する大阪市の発表資料。吹き付け材の落下など、労働者や利用者のばく露が疑われる事案は説明していない

◆石綿なしのはずが「検出」

これまで報じられたおもな内容は、
・市場の西棟ではりや天井の吹き付け材(耐火被覆材)35カ所を調べたところ、すべてから国の基準を超える石綿を検出。延べ床面積約5万3000平方メートルすべての吹き付け材に石綿含有と判明
・空気中に健康被害をおよぼす量の石綿飛散は確認されなかったため市場は継続使用
・吹き付け材の落下もあり、劣化のひどい部分(全体の26%、約1万3780平方メートル)から順次除去する方針
──といったところである。

これまでの報道からは、新たに吹き付け材から石綿が検出されたが、飛散もなく、これから対策を講じるとの市の説明がそのまま伝えられた。だが本当にそうだろうか。

ある専門家はこう指摘する。

「今回のような件ではいつもそうなんですけど、石綿が吹き付け材に入ってました。空気を測りました。空気中には出てませんでしたってのがストーリーですよね。でも空気で測るといってもたとえば、本当に石綿を含む建材が落下してきたときの空気じゃないのがそもそも間違いですよ。きれいになってから測っても仕方がないですから。要するに、石綿が出てませんよっていう検査をしたいだけというのがみえみえです」

日本の行政は問題点を極力隠そうとするのが残念ながら当たり前だ。本来なら最初に説明すべきことをきちんと発表資料にも入れないことも珍しくない。今回も取材して痛感した。

まずは発表内容を若干補足しながらおさらいしよう。発表によれば、果物や乾物、漬物売り場などがある西棟は鉄骨鉄筋コンクリート造6階建てで、延べ床面積約5万3000平方メートル。4階までは1974年竣工で、5階以上は1981年増設(1978年増設との記載もあったが、市に確認したところ1981年が正しいとのこと)。各階のはりや天井に耐火被覆材として厚さ2センチメートル程度の吹き付けバーミキュライト(ひる石)が使用されている。

4月3日、西棟4階で起きた火災により発生した廃棄物をその区画の施設使用者が処分するために調べたところ、同20日、国の基準(重量の0.1%)超の石綿が含まれていたことがわかった。5月11日、市に報告されたが、寝耳に水だったという。すでに2006年に分析して基準超の石綿含有がないことを確認していたからだ。

ところが市が4階のはりにある吹き付け材を分析したところ、6月8日に基準超の石綿含有が確認された。その後2回の調査で7月12日までに計35カ所を調べ、クロシドライト(青石綿)0.1%超~0.2%未満、クリソタイル(白石綿)0.3~3.9%、トレモライトないしアクチノライト0.1パーセント超~0.8%を検出した。

また市は6月22日と7月11日に一般の立ち入りのある計17カ所を測定し、空気1リットルあたり石綿を含む可能性のある「総繊維数濃度」は定量できる0.056本を下回る「定量下限未満」から0.45本だったという。市は2022年の全国の住宅地域の濃度「幾何平均0.056本/リットル未満~0.39本/リットル」と比較して「おおむね同程度」と説明。さらに〈世界保健機関(WHO)の環境保健クライテリアが、「空気中のアスベストが1~10本/リットルであれば健康リスクは検出できないほど低い」との記述と比較しても低い値です〉と安全性を強調する。

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