◆発表資料に飛散・指導の記載なし

ところが発表資料には記載がない。記者レクで説明したか聞くと、火災における石綿飛散は説明していないと認めた。

市は「飛散した可能性は、(記者から)聞かれればあったと答えたと思うのですが」と釈明した。吹き付け材の落下は過去に石綿とは無関係な話として発表されていたものの、今回の件で改めて説明していなかった。ただし記者レクで質問され、劣化範囲などを答えた。不適正施工や監督署の指導は説明したかどうか「わからない」という。

石綿飛散の可能性を説明せず、市は飛散していないとのデータばかり強調した。その結果、「空気中に健康リスクに影響を与えるアスベストは浮遊していない状況が確認されました」との市の発表ばかりが報じられることになった。

施設の労働者や利用者に石綿ばく露させた可能性がきわめて高いことは本来なら市が発表にきちんと記載し、真っ先に説明すべき重大事項のはずだ。そう市に尋ねると「申し訳ございません。説明すべきだったと思います」と謝罪した。しかし市が謝るべきは石綿を吸わされたかもしれない市場で働く人たちや施設利用者に対してだろう。

改めて発表すべきでないかと問うと、「内部で検討すべきとは思う」との回答だった。労働者や利用者の石綿ばく露リスクについて適切に開示する必要があるはずだが、そうした対応も発表では抜け落ちている。そのことを聞くと「上司と相談していく」と答えた。

筆者が指摘すると発表資料にない石綿飛散の可能性を次々認めるようすからは、市側は健康リスク以外は問題の本質をよく理解していることがわかる。つまり、あえて発表資料に書かないでおいて、記者レクで聞かれたら仕方ないので答えるが、気づかなかったらラッキーとでも考えていたのではないか。市は否定したが、都合の悪い事実を隠ぺいしようとしたといわれても仕方あるまい。

そしてこの間の報道からは、“隠ぺい”工作が見事に成功したといえよう。こうした市場で働く人たちや利用者のいのちにかかわる石綿リスクを軽視した、人権無視というべき大阪市の対応が今後どの程度改まるのか注視したい。

【関連写真】大阪市・中央卸売市場本場西棟でアスベスト含有吹き付け材が火災や落下ではく離したようす

 

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