大阪市の中央卸売市場本場(同市福島区野田)西棟ではりや天井の吹き付け材から国の基準を超えるアスベスト(石綿)が検出された問題をめぐり、市が施設の労働者や利用者らの石綿ばく露リスクを“隠ぺい”していた。じつは関連して市が発表で“隠した”ことはまだある。今回はそれらを明らかにする。(井部正之)

今年2月に大阪市の中央卸売市場本場西棟ではく離・落下したアスベスト含有の耐火被覆材。たびたび落下して粉々になっていたが、「石綿なし」と処理されてきた(市発表資料より)

◆市は「原因不明」と強調

7月14日に市は記者に発表内容をレクチャーする「記者レク」を開催し、果物や乾物、漬物売り場などがある西棟のはりや天井の吹き付け材から国の基準、重量の0.1%を超える石綿を検出したと説明した。西棟は鉄骨鉄筋コンクリート造6階建て、延べ床面積約5万3000平方メートル。4階までは1974年竣工で、5階以上は1981年に増設した。各階のはりや天井に厚さ2センチメートル程度の吹き付け材(耐火被覆材)が使用されていた。この吹き付け材は、市によれば、発注時「ひる石プラスタ」つまり吹き付けバーミキュライト(ひる石)と指定。市が撮影した写真でもそのように見え、分析機関もそう判断していることから前回の記事でもそう記載したが、仕様に「ゾノライトモノコート・トムウェットまたは同等品」とかっこ書きで記載しており、実際にどの施工かは不明というのが市の見解だ。 今回の問題が発覚したきっかけは4月3日、西棟4階で起きた火災だ。廃棄物を処分するため、区画の使用者が分析依頼したところ、同20日に石綿含有が明らかになった。市が報告を受けたのは5月11日である。 市の説明によれば、過去3回にわたって市場本場の吹き付け材を分析し、いずれも基準超の石綿含有がないことを確認していた。最初の1987年調査は5%基準、2005年調査は1%基準で現在(0.1%)と異なる。しかし2006年調査は現在と同じ0.1%基準。少なくとも市は現在の基準で分析して石綿含有なしを確認していたことになる。 ところが今回、市が改めて4階のはりにある吹き付け材を分析したところ、6月8日に基準超の石綿含有が確認された。その後2回の調査で7月12日までに計35カ所を調べ、クロシドライト(青石綿)0.1%超~0.2%未満、クリソタイル(白石綿)0.3~3.9%、トレモライトないしアクチノライト0.1パーセント超~0.8%を検出した。 つまり問題の本質の1つは発表でも触れているとおり、「2006年度の調査では検出されなかったアスベストが、今回の調査で含有していることが判明し、調査結果が異なっていること」である。 市によれば、記者レクで2006年と今回の調査でおおよそ以下の3つの要素が異なると説明した。 (1)検体採取方法の違い 2006年調査では3cm×3cm×1cm(深さ)の9立法センチメートルを採取したが、2014年度の厚労省マニュアル以降は下地まで貫通するよう求めており採取方法に違いがある。 (2)分析技術向上による精度の向上 2006年以降に分析法の日本産業規格(JIS)が改正されているほか、「光学式顕微鏡から電子顕微鏡への変更」で分析精度が向上している。 (3)検体採取箇所数が少ない 2006年調査は市場運営を継続しながらの試料採取が困難であったため、本市管理区画6カ所(実際には3試料分)を調査した。 そのため市は「原因は特定されておりません」との見解だ。

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