銃を携行して鴨緑江沿いを巡回する北朝鮮の国境警備兵。2023年10月中旬に平安北道の新義州を中国側から撮影アジアプレス。

◆「密輸、脱北はもう不可能だ」

この3年10カ月の間、北朝鮮の金正恩政権は中国との国境地帯の警備体制をかつてなく厳重にし、鴨緑江と豆満江沿いを有刺鉄線や監視哨所で幾重にも封鎖してしまった。その実態について、現役の国境警備隊員は「地雷が埋設されていて兵士たちも怖がっている」と、アジアプレスの取材強力者に述べた。(カン・ジウォン/石丸次郎

両江道(リャンガンド)に住むアジアプレスの取材協力者は8月、鴨緑江上流域で任務に就く国境警備隊の下士官A氏に接触した。北朝鮮では7月からコロナに対する統制が緩和され、軍人が部隊から外出できるようになっていた。A氏は20代後半のベテラン警備隊員である。また、咸鏡北道(ハムギョンプクド)に住む協力者も警備体制について住民に調査を行った。

鴨緑江沿いに有刺鉄線が幾重にも張られている。その背後の畑はおそらく緩衝地帯だろう。2020年以降、農作業をする住民も立ち入りの際に許可を得なくてはならなくなった。平安北道朔州郡を中国側から撮影アジアプレス。

◆国境警備の実態

「今後は、もう密輸も脱北も不可能だ」

国境警備兵A氏は、このように断言した。以下は、その理由についてA氏から聞き取った内容である。

「監視カメラが24時間作動している。特に越境の警戒を要する地点では、専門の担当がずっとモニターを見ており、画像は保存されて上部でも見ることができるようになっている。電気事情はとても悪いものの、鉄条網には不定期に電流を流していて、勤務する警備兵も怖がっている。雨の日には感電事故が起きるかもしれないと、鉄条網のそばには行かないようにしている。国境から500メートルまでの区域に緩衝地帯を作る工事が続いており、アリ一匹入らせるなと指示されている。緩衝地帯が完成したら、民間人が国境に接近するのは無理だろう」

この緩衝地帯造成に関連して、豆満江沿いの会寧(フェリョン)市に住む協力者は、8月後半に次のように証言している。

「緩衝地帯を作るために豆満江の国境近くの村を撤去して、住民をほかの地域に強制移住させる作業が続いている。国境近くの協同農場の畑は潰さずそのまま柵で囲って、出入りする人員を固定して農作業をさせている。その際には警備隊員が一緒に農地に入って、農民が国境に近づかないように監視している。無断で進入すれば射撃すると警告している」

緩衝地帯の設定は、コロナパンデミックが始まった2020年の8月に、警察名義の布告を出して始まった。アジアプレスが入手した布告には「国境に接近する者は無条件に射撃する」と書かれていた。

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